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せんせいといっしょ：若林先生編
●今日もさほり日和？●
後木 真央は、今日も朝から元気だった。
「天野ちゃん、『さほる』って知ってるのだ？」
「聞いた事はあるけど……」
忙しない雰囲気が漂う廊下で、逆巻 天野は他の組の友人と挨拶を交わし教室へ流れ込んでいく生徒を見送りながら答えた。
その声音には、ちょっと怪訝な色が浮かんでいる。
「真央ちゃんもこう、自然にご優雅にさほってみたいのだ！ 名案求むなのだ！」
「名案も何も、あまり関心出来ない事だと思うけどね」
「えーーーっ、さほるって良くない事だったのだ！？」
衝撃を受ける真央。
おっと、そうこうしている間に1限の時間も近い。
「とりあえず教室に入らないと。またね」
「うー、またなのだ！」
慌ててやって来る生徒に紛れて、二人はそれぞれの教室に戻っていったのだった。
「わあぁん！」
ふわふわとした赤い髪を揺らして、御薗井 Ｅ セレッソは校舎に駆け込んだ。
廊下はしんとしていて、扉を閉め切った教室からは時折先生のものらしき低い声が漏れ聞こえてくる。
もう1限が始まってしまっているのだ。
この状況で堂々と自分の組に入っていくのは、かなりハードルが高い。
「ど、どうしよ、ドウシヨ……」
オロオロうろうろしていると、上の階から具合の悪そうな生徒を連れた二年の女子生徒が降りてきた。
「どうしたの？」
セレッソがあわあわしながら事情を話すと、女子生徒が「それなら」と北校舎に視線を向ける。
「おーおー、どうしたの」
今日の若林 沙穂先生担当の授業は2限かららしく、彼女は控え室で何かのファイルを広げていた。
「せんせーあのね……」
セレッソはしょげた様子でソファに座り、遅刻してしまった事を説明し始める。
下宿先の『天盛質店』の住人は、今日は朝から不在にしていた。
「おじーちゃん達がいないって事すっかり忘れてて、目覚ましかけ忘れて起きれなくって一生懸命走ったんだけど、学校に来るのこんな時間になっちゃったのヨ……」
それで、通りすがりの上級生にここを教えて貰ったのだと。
「そうだったの。授業始まっちゃった教室に、ひとりで入っていくのは確かに勇気が要るわね」
笑みを浮かべる沙穂先生に「そうなのヨ！」とセレッソはうんうん頷く。
頭の横で二つに結んだ髪が、犬の垂れ耳のように跳ねる。
「あのね沙穂せんせー、これってやっぱりサボりってやつナノ？！」
「ここに来る子たちはよく『さほり』って言ってるけどね」
「えっさほり……？」
不安げに尋ねたセレッソは、先生の返答にきょとんとした。
「ワタシ、寝子島に来る前にパーパと約束したノ！ ちゃんと学校行って授業受けるっテ！
ちゃんと行かないと追い出されちゃうかもって言ってたノ！
学校楽しくて面白くってずっとここにいたいくらい！
だからここでつまづいてる場合じゃないのヨー！ まだ5月ナノー！！」
まくし立てながら足をジタバタさせるセレッソ。
沙穂先生はただ微笑みながら、そんな彼女を見ていた。
はっ、とセレッソは気付いてまたしゅんと肩を落とす。
「一気に喋っちゃったワ……ちゃんと人の話聞かないとお友達出来ないって知ってるのニ！」
ちらりと視線を上げると、沙穂先生は相変わらず笑顔のままで「良いわよ、もっと話して頂戴」みたいな顔をしている。
若干可愛い小動物を見るような目をしているような、気もするけれど。
「せんせー……！ ワタシ今のままでも素敵なお友達がいるノ。
でももっと沢山のコト知りたいし、沢山お友達がいたらいいなっテ！
いっぱい考えると頭ぐるぐるしちゃうけど、お友達の事ちゃんと考えて仲良くしたいノ！
ワタシに出来るかしら？」
「それは勿論よ」
沙穂先生は頷いた。
「セレッソは明るいし素直な感じだから、きっとそういうところに惹かれて集まってくる友達が多くなるんじゃないかしら。
なぁに、誰だって変わったところや欠点なんていくらでもあるわよ。
でも、それが個性や長所にもなり得る」
芸術科なんて変わり者ばっかりだし、協調性なくてもなんとかやってる子もいるからね、と彼女はのんびりと笑う。
「学校の中で沢山の人と触れ合う機会って大切よ。仲良くなれるとは限らないし、嫌われたり、そりが合わない人もいるかも知れない。
でも、そういう人たちと出会う事も、必要なのよ。良い友達と出会う為にもね」
学校は学ぶ場所だが、それは何も勉強だけじゃなくて、人との付き合い方を知っていく場でもあるのだと。
だから失敗を恐れないで飛び込んでみたらいい、と。
「まあ、とりあえずウチが単位制で良かったわよね」
なんて軽口を交えて、1限が終わるまでの間、沙穂先生は手を動かしつつもセレッソとお喋りに興じた。
後木 真央は、今日も朝から元気だった。
「天野ちゃん、『さほる』って知ってるのだ？」
「聞いた事はあるけど……」
忙しない雰囲気が漂う廊下で、逆巻 天野は他の組の友人と挨拶を交わし教室へ流れ込んでいく生徒を見送りながら答えた。
その声音には、ちょっと怪訝な色が浮かんでいる。
「真央ちゃんもこう、自然にご優雅にさほってみたいのだ！ 名案求むなのだ！」
「名案も何も、あまり関心出来ない事だと思うけどね」
「えーーーっ、さほるって良くない事だったのだ！？」
衝撃を受ける真央。
おっと、そうこうしている間に1限の時間も近い。
「とりあえず教室に入らないと。またね」
「うー、またなのだ！」
慌ててやって来る生徒に紛れて、二人はそれぞれの教室に戻っていったのだった。
「わあぁん！」
ふわふわとした赤い髪を揺らして、御薗井 Ｅ セレッソは校舎に駆け込んだ。
廊下はしんとしていて、扉を閉め切った教室からは時折先生のものらしき低い声が漏れ聞こえてくる。
もう1限が始まってしまっているのだ。
この状況で堂々と自分の組に入っていくのは、かなりハードルが高い。
「ど、どうしよ、ドウシヨ……」
オロオロうろうろしていると、上の階から具合の悪そうな生徒を連れた二年の女子生徒が降りてきた。
「どうしたの？」
セレッソがあわあわしながら事情を話すと、女子生徒が「それなら」と北校舎に視線を向ける。
「おーおー、どうしたの」
今日の若林 沙穂先生担当の授業は2限かららしく、彼女は控え室で何かのファイルを広げていた。
「せんせーあのね……」
セレッソはしょげた様子でソファに座り、遅刻してしまった事を説明し始める。
下宿先の『天盛質店』の住人は、今日は朝から不在にしていた。
「おじーちゃん達がいないって事すっかり忘れてて、目覚ましかけ忘れて起きれなくって一生懸命走ったんだけど、学校に来るのこんな時間になっちゃったのヨ……」
それで、通りすがりの上級生にここを教えて貰ったのだと。
「そうだったの。授業始まっちゃった教室に、ひとりで入っていくのは確かに勇気が要るわね」
笑みを浮かべる沙穂先生に「そうなのヨ！」とセレッソはうんうん頷く。
頭の横で二つに結んだ髪が、犬の垂れ耳のように跳ねる。
「あのね沙穂せんせー、これってやっぱりサボりってやつナノ？！」
「ここに来る子たちはよく『さほり』って言ってるけどね」
「えっさほり……？」
不安げに尋ねたセレッソは、先生の返答にきょとんとした。
「ワタシ、寝子島に来る前にパーパと約束したノ！ ちゃんと学校行って授業受けるっテ！
ちゃんと行かないと追い出されちゃうかもって言ってたノ！
学校楽しくて面白くってずっとここにいたいくらい！
だからここでつまづいてる場合じゃないのヨー！ まだ5月ナノー！！」
まくし立てながら足をジタバタさせるセレッソ。
沙穂先生はただ微笑みながら、そんな彼女を見ていた。
はっ、とセレッソは気付いてまたしゅんと肩を落とす。
「一気に喋っちゃったワ……ちゃんと人の話聞かないとお友達出来ないって知ってるのニ！」
ちらりと視線を上げると、沙穂先生は相変わらず笑顔のままで「良いわよ、もっと話して頂戴」みたいな顔をしている。
若干可愛い小動物を見るような目をしているような、気もするけれど。
「せんせー……！ ワタシ今のままでも素敵なお友達がいるノ。
でももっと沢山のコト知りたいし、沢山お友達がいたらいいなっテ！
いっぱい考えると頭ぐるぐるしちゃうけど、お友達の事ちゃんと考えて仲良くしたいノ！
ワタシに出来るかしら？」
「それは勿論よ」
沙穂先生は頷いた。
「セレッソは明るいし素直な感じだから、きっとそういうところに惹かれて集まってくる友達が多くなるんじゃないかしら。
なぁに、誰だって変わったところや欠点なんていくらでもあるわよ。
でも、それが個性や長所にもなり得る」
芸術科なんて変わり者ばっかりだし、協調性なくてもなんとかやってる子もいるからね、と彼女はのんびりと笑う。
「学校の中で沢山の人と触れ合う機会って大切よ。仲良くなれるとは限らないし、嫌われたり、そりが合わない人もいるかも知れない。
でも、そういう人たちと出会う事も、必要なのよ。良い友達と出会う為にもね」
学校は学ぶ場所だが、それは何も勉強だけじゃなくて、人との付き合い方を知っていく場でもあるのだと。
だから失敗を恐れないで飛び込んでみたらいい、と。
「まあ、とりあえずウチが単位制で良かったわよね」
なんて軽口を交えて、1限が終わるまでの間、沙穂先生は手を動かしつつもセレッソとお喋りに興じた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年07月26日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年08月02日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年08月02日 11時00分
