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NECO MUSIC FES 1370!
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向日葵の咲く庭に聞こえているのは、座敷の隅っこに放置された携帯ラジオからの声。
『酒に温泉、老若男女に猫とくれば寝子温泉。今日の寝子温泉はいつもに増して猫の姿が多いような――ああっ、にゃんこ! ここにもにゃんこー!』
夏の風とはまた違う熱を帯びた温泉のにおいが頬を撫でて、
回田 はつな
は唇に浮かぶ笑みを深めた。
隣には、ラジオで情報を聞いたこの日のために誘った友達、
跡野 茉莉
。透き通るような白い肌の頬にどんな表情も浮かべずに、けれど足取りを合わせ肩を並べて歩く茉莉の横顔をちらりと盗み見てみる。
(茉莉ちゃんと寝子温泉!)
そう思えば、知らず、夏陽を写し取った黒い瞳がきらきらと輝いた。
(足湯、楽しみなんだよね~)
特設会場に設けられた今日限りの足湯。お祭り会場の真ん中でぽかぽかの足湯に裸足をつけるのはどんな気持ちだろう。友達と一緒に足湯につかるのはどんな気持ちだろう。
向日葵の咲く路地の電柱に貼り付けられた『寝子島音楽祭(NECO FEST 1370)会場 こちら』のポスターに従って緩い坂道を登る。ゆらゆらと陽炎の立つ盛夏の小路には、同じ会場に向かうらしい人々と、それからたくさんの猫。
(……今更なんだけど、渋すぎ?)
視界に入る限りの人々は皆、自分たちよりずっと年上に見える。楽し気に歩いて行く猫たちさえ自分たちより年配に見えてきた。
温泉宿の浴衣に羽織姿の老夫婦、華やいだ雰囲気のおばさま方とその後を少しだけ疲れた様子でついて行くおじさま方。しゃなりしゃなりと尻尾を揺らすさび猫に、道の途の塀の上で立ち止まって大あくびをする黒猫。大人ばかりの周りに、ほんのちょっぴり場違いな気持ちに駆られてはつなは隣の茉莉をまたちらり、盗み見る。
道の先へ定めた視線を揺らがせることもなく、茉莉はほとんど無表情に道を歩いている。周りの景色を映す、黒い色した瞳を覗き込んでみたくなる。吸い込まれそうなほどに深く黒い瞳をじっと見つめれば、もしかしたら彼女が今何を考えているのか分かるかもしれない。
(好みじゃなかったらどうしよ……)
気後れを感じさせてしまっているとしたらどうしよう。
ちらちらと視線を向けていて、ふとこちらを向いた茉莉と視線がぶつかった。漆黒の瞳をぱちりと瞬きさせる茉莉に、はつなは笑顔を見せる。
「人も猫もいっぱいだね~」
足湯に行ってみない~? と誘ってくれるはつなに、茉莉はこくりと頷いた。はつなのように屈託のない明るい笑顔を浮かべようとして、唇の端のひとつも動かせずに終わる。
きっと無表情のままに見えるだろうに、はつなは嬉しそうに笑みを深めて楽しそうに隣を歩いてくれる。
(温泉って普段は来ないけれど……)
石畳の路地には小さな和菓子屋に土産物屋、隠れ家じみた温泉宿。のんびりと歩く浴衣姿の人々は、誰もがゆったりとした表情。
(なんだろう、流れる時間も空気も違う気がするな)
この場所に慣れていないことを感じ取っているのか、はつなは温泉街についたときから気遣わし気な視線を寄越してくれる。
(……はつなちゃん)
心の中で名前を呼んで、心の中とはいえ名前で呼んだことに少しドキドキしてしまう。でも、だからこそ思う。
(新たな楽しい発見がきっとある)
そんな気がする。
「行こう、茉莉ちゃん! 今回の目当てはそれなんだ~」
はつなの言葉にもう一度頷いて、茉莉はなんだかドキドキして熱を帯びる唇を開く。
「うん、行こう。……はつなちゃん」
日除けのタープテントが広げられた下には、竹製の長椅子と檜の足湯。敷かれたゴザの前でサンダルを脱ぎ、無料配布の手ぬぐいを片手に空いた長椅子に隣同士で腰掛ける。
夏の道を歩いて熱くなった爪先をお湯にさしいれる。爪先よりも熱いお湯に触れ、九夜山から吹き降りて来る夏風を頬に感じれば、不思議と汗はひいた。
「うひ~」
あったかいお湯にのんびり裸足をつけながら、はつなはくすぐったいような笑みを零す。
「夏だけどいいね~こういうの~」
「そうだね」
三つ編みを小さく揺らし、茉莉が頷いた。それだけのことが嬉しくて、はつなは瞳を細める。
女子高生ふたりは肩を並べ、しばらく互いに口を閉ざす。真昼の空に長閑に流れる演歌や民謡を聴くともなしに聴き、会場に設けられた利き酒や焼き鳥の屋台を見るともなしに見る。
(いつかは)
ふと、思った。
(私も大人になるんだよな)
温泉の湯気に頬を撫でられつつ、はつなは睫毛を瞬かせる。隣で一緒に足湯につかっている友達の、人形のように綺麗な横顔を見遣る。今を一緒に過ごしている友達は、この瞬間に何を思っているのだろう。
茉莉の漆黒の瞳が小さく揺らいだ。凛とした一重の瞳がゆっくりと周囲に向けられる。
温まった足から視線を上げれば、目に入って来るのは会場をぐるりと包む樹々の緑。夏の日差しと緩い風にざわざわと揺れる緑の下では、年齢を重ねた人達がそれぞれに楽し気に話をしている。人々の間に流れるのはどこまでもゆったりとした空気と、茉莉が普段聴かない演歌や民謡。
(私たちは)
暑気に疲れた身体が温泉の熱に和らいでゆくまま、茉莉は静かに息をする。
(今、そんな中にいる)
流れる時間のただ中で、友達とふたり肩を並べている。
そう思った途端、ずっと解けなかった数式が解けるように気が付いた。
(ああ、)
こうやって年月は積み重なっている。積み重なって行く。
気づいた途端に、気づいたことを隣のはつなに話したくなった。隣のはつなを見ると、何故だかはつなと目が合った。
「あのね」
「あのね」
発した言葉が空中でぶつかって、ふたりは顔を見合わせる。はつなが目を丸くして、次には心底楽しそうに笑う。
「あ、先に言っていいよ! 私のは後からで全然おっけ~だもん~」
笑いながらはつなは言葉を先に譲る。だって先に話し出すのは大体いつも、自分の方。折角茉莉が何かを話そうとしてくれているのだから、きちんと耳を傾けたい。
(有耶無耶になって聞き逃したらヤだからね!)
茉莉の真直ぐな視線を受け、茉莉はぱちぱちと瞬いた。ちょっと睫毛を伏せ、上げる。はつなの眼差しを真直ぐに受け止める。
「……時間って、こうして積み重なっているんだね」
考えをまとめず口にして、
「私、ここに来てみてわかったような気がする」
口にしながら迷う。
(私は何を言おうとしているのだろう)
それでも、今この時を一緒に過ごしている大切な友達に、今感じたことを感じたままに伝えたかった。
「……それで、時間が経っても、」
茉莉は迷い迷い言葉を紡ぐ。
「これからもずっと、」
紡ぎながら、はつなに伝えたいと思った自分の気持ちの核心に思い至った。
(……そうだ)
「はつなちゃんと変わらず仲良くいられたらいいなぁって」
(私は)
「……そんなことを思ったんだ」
(私は、それを言葉で伝えたかったんだ)
隣にいてくれるひとに思ったことをきちんと言葉で伝え切って、茉莉は小さく小さく息を吐く。
言葉と同じに朴訥で真摯な眼差しの先、はつなは笑顔はそのままにしばらく言葉を失くした。幾度か睫毛を上下させる。呼吸に胸を上下させる。
「ちょっと、びっくり、して……」
渡された言葉を残さずぜんぶ胸に納め切ってから、はつなは瞳を細めた。
「丁度ね、私も同じこと言おうと思ってたの」
胸の内でもう一度、茉莉の言葉を繰り返してみる。
「ね、茉莉ちゃん」
言いかけて、唇が迷う。
「私達さ、大人になっても……」
次に続けたい言葉はあるのに、間違いなく心にあるのに、見つけられなかった。
言葉を探し出せずに睫毛の陰を頬に落とすはつなの手に、茉莉はそっと手を重ねた。手に手を重ね、ただ黙って肩を並べる。
「……うん」
途切れた言葉の先は、きっと自分と同じ。それが分かる気がして、茉莉は夏の空と森の緑を黙って見上げた。
はつなは重なった手と手を見下ろす。言葉にできなかったのに、茉莉が自分の胸の想いを汲み取ってくれたことにほっとする。嬉しくなる。それと同時、心と心が通じ合っていることに少し照れくさくなった。きらきらと光を揺らす温泉の水面ばかりを見つめてしまう。仲良く並んだふたりの足元ばかり見つめてしまう。
身体も心もぽかぽかになって顔を上げると、
(……あれ?)
すぐ隣で空を見遣る茉莉の横顔が、普段ほとんど表情を動かさない彼女が、
(笑って、る)
ように、見えた。
見えただけかもしれなくても、はつなには分かった。茉莉の気持ちは、心は、間違いなく微笑んでいる。微笑んでくれている。それがとてもとても嬉しくて楽しくて、胸の奥から笑みが溢れた。
ぽかぽかでふわふわな満面の笑顔と心に、はつなのろっこんが発動する。青紫の朝顔に真紅のハイビスカス、深紫の桔梗に桃色の百日紅、色とりどりの夏の花が周囲に舞い散る。足湯の中にも外にも花が溢れる。
「わ」
思っていたよりたくさんのろっこんの花の出現に焦りはするものの、周囲の人々はネコフェスの演出だと思ったらしい。わあっ、と沸く人々の歓声にはつなは頬を薄紅に染める。いつもは慌てて片付けてしまうけれど、今日はこのままでも、
(いい、かな~……?)
それに今は、隣の茉莉が不思議そうにこちらを見ている。
「はつなちゃん?」
呼びかけられて、はつなはふふ、と笑みを返した。
「何でもないよ~。そだ! なんか飲も~!」
温泉から足を上げ、タオルで雫を拭う。
「アルコールの入ってないやつ!」
付け足すように言って、ちょっと想像してみる。
いつかまた、ふたりでここに来よう。今度は温泉にゆっくり浸かってみてもいい。夕暮れの温泉街をぽかぽかの身体でお散歩してみてもいい。そうして、いつかの何度目か、大人になったときにははしご酒を楽しんでみようか。
何度だってふたりで来よう。何度だって、いつまでだって、ふたりで仲良く過ごして行こう。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
70人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年03月28日
参加申し込みの期限
2019年04月04日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年04月04日 11時00分
参加キャラクター一覧
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