夏の思い出、ください……ゲームショップで｜リアクション

夏の思い出、ください……ゲームショップで

　卵城秘月と吉住志桜里の試遊会は続いている。
　つぎは……？
　と秘月は小首をかしげた。

「くじびきで、引いた単語を組み合わせて短文を作るゲーム……そういう認識でいいのかな？」
　志桜里も説明文を読んで理解したようだ。
「しかもお互いを他人に紹介する内容、ってテーマでやるわけね」
「つまり、志桜里君が私のことを内心どう思っているかが白日のもとにさらされるわけだね。面白いじゃないか」
「おっといけない、だったら無難なものを選ばなくちゃ……って、次は秘月もやるんだからね」
　そしてくじ引き完了。
「いやあ……秘月の悪口にならないよう頑張ったつもりなんだけどね」
　くじ運が悪かったわ、と志桜里は頬をかいた。
「いいから読んでみてよ」
「『猫かぶり』しつつ『おさわり』ばかり『大胆』な犯行も胸中は『平坦』……うん、救いようがなかったわ秘月」
「ほお、言ってくれるじゃないか」
　なにやらワザとではないかという組み合わせだねえ、と苦笑いしながら秘月は腕組みする。
　それにしても。
　――『猫かぶり』しつつ、『おさわり』か……。
　動揺は見せていないつもりだが、秘月がいささか驚かされたのは事実である。
「まあ、堪忍するとしようか。なにしろ十年ぐらいの付き合いだから、これぐらいは慣れっこだしね。この面の皮の厚さにも」
「『大胆』な犯行も胸中は『平坦』……ってリリックが良くない？　韻も踏んでるし」
「フフッ、実は君自身のことを言ってるんじゃないかな？」
　なんて返しながら、ではと秘月もくじに挑戦した。
「無作為ながらいいものができたと思う。志桜里君の異名にぴったりかな」
「拝聴するよ。カモン」
「ふたつ続けて行こう。『ベストオブ健脚』、そして『即時行動の白黒熊』！」
「おお……って、何よそれ。パンチの効いたdisじゃない！？」
「そうか？　続いての入場は『ベストオブ健脚』吉住志桜里選手～、とか紹介されたくないかい？」
「されたくないよ！　なんの選手よ！　って足の大きさ気にしてるんだけど」
「そうか？　志桜里君の足は鍛えられたいい太さの足じゃないか。もう少し脂肪はあってもいいとは思うけど」
「あとその『即決パンダ』みたいなの何？」
「志桜里君は行動力が強いからぴったり……と思ったが、うん？　見ようによってはただの脳筋かな？」
　ふーん、と今度は笑顔で志桜里が腕組みする番だった。
「即決した健脚の関節ワザ　体験してみる？」
「おっとそいつは御免こうむる」
　とはいえラップバトルのようなやりとりが面白かったのでこちらも購入決定となった。
「ところでラッパー同士のバトルというかディスりあいをbeef（ビーフ）って言うのよ。知ってた？」
「ビーフ？　いまはパンダ肉のことを言っていたんじゃなかったか」
「そのネタまだ言うか！？」

　ふたりの試遊はまだまだつづく。
　他にも死因当てゲーム等、突拍子のなさとブラックでもあるユーモア精神に満ちたゲームを試し、笑っては買い込んでいくふたりなのだった。
　今夜から部屋は、ぐっと賑やかになることだろう。

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