NEKOJIMA of the DEAD　終末エンジョイ部｜リアクション

NEKOJIMA of the DEAD　終末エンジョイ部

『寝子島の探索チームはニャマゾン倉庫の物資調査から帰還しました。現地には沢山の物資が発見され――』
　ラジオから聞こえる声に、多喜勇生は穏やかに笑った。
「へえ、案外近くまで来てたんだな。今度回収作戦にでも加わってみるかな」
　スプリングの死んだベッドのマットレスに寝そべる勇生。
　表側の勇生は頻繁にあの平和な寝子島暮らしに戻りたがっていたが、サツバツとした暮らしを長くしすぎたせいだろうか、それとも眼鏡をどこかに落としてきてしまったせいだろうか、勇生の性格は比較的裏側寄りのものに定着しつつあった。
「おい勇生！　ゾンビラッシュだってよ」
「へいへい……」
　勇生は寝そべっていたベッドから起き上がり、カーテンを引く。
　するとそこは広々としたホームセンターだった。
　商品棚を並べて作ったマイスペースから出ると、同じくホームセンターに身を寄せていた本土のサバイバル仲間たちが改造ボウガンやチェーンソーを手にこちらを見ている。
　どうやら勇生の言葉を待っているらしい。
　この世界になじんでいくうち、しらずしらずにコミュニティのリーダー的存在になっていたのだろう。
　勇生は口の端だけで笑うと、改造ショットガンを肩に担いだ。
「今日も元気にゾンビ掃除だ。行くぜ皆ァ！」

　ホームセンターめがけて走るゾンビの群れ。
　駐車場から入り口にかけて作られたバリケードを乗り越える彼らをまず出迎えたのは、回転のこぎりの歯が発射されるトラップだった。
　何体ものゾンビがのこぎりを顔や腕にめりこませて倒れるが、バラバラにしてもまだ動くような連中である。頭にノコギリをめりこませたままゾンビたちがホームセンターに駆け寄ってくる。
「おい止まらねえぞ！」
「心配すんな、ありゃあ対人間用のトラップだ。元々ゾンビが止まるとは思ってねえよ」
　勇生は焦る仲間を落ち着けてやると、第二バリケードの上からショットガンを乱射。
　何体か仕留めてから第三バリケードへと後退した。
「お前らどいてろ！」
　大きな機械からシートをはがし、レバーを握り込む。
　まるで機関銃のようなサイズをしたそれは、改造火炎放射器である。
「ちょ、それはまだ試作――」
「Ｚニャイルスごとこの世から去りな！」
　激しい炎が、バリケードごとゾンビたちをなめていった。

　黒焦げの死体が転がる。
　バリケードも真っ黒になったのを見て、勇生はファンキーに笑った。
「こりゃあダメだ。外で使うモンだぜ」
「そう説明したはずだが？」
「ハハッ……！」
　悪い悪い。そう言って外に出ると、置きっ放しになっていたラジオチューナーから今日の天気と星占いを読み上げる声が流れてきた。
　世界がこんな風になっていても、人はその日の天気が気になって、明日の運勢が気になって、人を好きになったり腹が減ったり、友達ができたり泣いたりする。
「こういうのを……生きてるっつーのかも、な」
　勇生は笑って、ホームセンターへと戻っていった。
　今日の夕飯はコンビーフだ。

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
ファンレターはマスターページから！

　終末世界なんて言葉を色々な映画や漫画で見かけますが、それでも案外人は生きていて、案外文明自体は滅んでいなかったりしますよね。
　それはなぜかっていえば、今回の皆さんのように『生きよう！』とする人々がいるから、かもしれません。
　娯楽を求めたり、平和を求めたり、産業を求めたり。たまにスリルを求めたり。
　きっとこのＩＦ世界の皆さんも、強くたくましく、そして明るい未来を築き上げることでしょう。

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