NEKOJIMA of the DEAD　終末エンジョイ部｜リアクション

NEKOJIMA of the DEAD　終末エンジョイ部

　本土への船が進む。
　ワゴン車を乗せた船が、寝子島を離れ本土の港へと近づいていく。
　運転席から下りた三折部朝衣は、どこか奔放な海風に髪をあそばせてみた。
　深く息を吐いて、大きく吸い込む。
　海風は今日も美しく、空は透き通るように晴れ渡り、遠い山が目に見えた。
「今日も、波乗り日和ね」

　Ｚニャイルスによって生活環境は大きく変わり、治安維持が不可能になった日本は一時期ひどく乱れたが、その混乱も長くは続かなかった。
　海外はあちこちで暴動がおき、過激な主義主張がコミュニティ単位でぶつかりちょっとした戦争状態にあると聞くが、日本はその点平和であった。
　殺し合っても長生きできないことはすぐに察しがついたし、日本の食糧自給率と減少した人口予測を考えれば、このまま仲良く暮らしたほうがずっと安全だとかなり早期に気がついたのだ。
　そのため武装はゾンビからの防衛に特化し、一般に広く行き渡った。
　朝衣が気に入っているのは改造サブマシンガン。
　乾電池で動き特定サイズの釘を連射するという優れものだ。
　弾の調達や製造が容易であり、扱いやすい。
　これを旅のお供にして、朝衣は月一で『冒険』に出かけるのだ。

　本土に渡る寝子島民には三種類いる。
　食料や雑貨等を調達するために本土の百貨店やコンビニエンスストアを巡る探索者。
　安全性の確保や研究のために定期的にゾンビ駆除と開拓を進める開拓者。
　そして、本土の観光と冒険を目的とした冒険者である。
　タンクトップとホットパンツ。そしてサンバイザーを被った朝衣は、冒険者であった。
「会いたかったわ南房総！　相変わらず千葉千葉しいわね」
　外房海沿いの道路をワゴン車で飛ばしながら、朝衣は運転席の窓を開けた。
　サーファーには人気のスポットがこの辺りの海岸には並んでいる。
　朝衣のお目当ては、その波乗りスポットである。
「よう朝衣ちゃん。今年も来たかい」
　アロハシャツに麦わら帽子の男が、アサルトライフル片手に手を振った。
　ワゴン車を止めておりてみると、海岸が随分と賑わっている。
　が、その殆どがゾンビだった。
「サーファーは海を綺麗に使うもんだ。だから掃除は欠かさねえ」
「ま、そういうこと」
　朝衣はサブマシンガンを手に海岸へと飛び出した。
　ゾンビを蹴散らし、時折波に乗り、そしてまた蹴散らしては片付ける。
　この世に至っても、サーファーはまだサーファーのままだった。

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