公道を走るバイク。
どこか焦げ付いたような、腐ったような臭いのする町を、一台のバイクが走り抜ける。
アスファルトに転がったゴミや、誰かの衣服や、固まった血。
ふらりと道路に歩み出た人影に、ゴーグルをつけた『彼』は躊躇無く改造ショットガンを発砲した。
はじけ飛ぶ上半身。
それでもなお歩いてこちらに移動しようとする相手を、彼は……
多喜 勇生はバイクで撥ねて通り過ぎた。
死体が動き出すという謎の病気Zニャイルスが世界のどこかでパンデミックを起こしてから半年。
アメリカ中国ドイツロシアグリーンランドと世界各国が同様のパンデミックに呑まれ、世界人口は数えることすらできないほどに減少した。
情報ネットワークは崩壊し、産業は崩壊し、残っているのは無人発電所から供給され続ける電力くらいなものである。
「今は亡きインフラおじさんたちに感謝だな」
勇生はバイクをとめると、ゴーグルを額へ上げた。
見上げる看板は、ホームセンター。
バリケードだらけ、セキュリティだらけ、軽く要塞と化したここは。
滅んだ世界に見つけた、彼の第二のホームである。
世界人口の多くが『歩く死体』となった今。
寝子島も例外なく滅びの波にさらされていたが……。
本土と離れている上に案外なんでもあった寝子島は絶望的終末ムードに呑まれること無く、案外陽気に日々が続いていた。
世界が滅ぼうが来期のアニメ放送が無くなろうが人が生きているからには、生活をせねばならぬ。生活をするからには、楽しまねばならぬ。
寝子島に生きる人々は、終末世界で第二の人生をエンジョイするのだ。
――きげ――う――ご――よう――
ごきげんよう、寝子島のみなさん!
終末ラジオ放送です!
寝子島ショッピングモールラジオ放送ブースからお送りします!
世界がごっそりと崩壊してからもう一年が過ぎましたね。
寝子島の皆さんがそれに気づいて本土への橋を爆破処理で落としたこと、今では素晴らしい英断だと分かります。
なぜならあれほど絶望的な状況にある本土に比べて、ここ寝子島は平和そのもの。
自給自足で暮らす人や、時折船で本土に行っては物資を調達してくる人。こうしてラジオ放送をしたり本や絵をかいて発表したり……案外人類って、この規模でも楽しくやっていけるものですね!
さあ、今日はそんな皆さんの生活を振り返るお便りを募集します。
今あなたはどんな風に生活していますか?
自給自足? それとも本土でスリリングな毎日を?
フツウの壊れたこの世界で、あなたはどんな風に生きていますか?
==============================
※この世界はらっかみ時空と大きくずれたIF世界。
あるひ崩壊した人類文明の中で、それでも人生をエンジョイする皆さんの陽気な終末世界です。
この世界ではこんなことが起きています
・Zニャイルス感染者、通称『ゾンビ』が本土や海外にはあふれています。
彼らはバラッバラにしても動くうえ、生きている人を見つけるとヴァーと言って襲いかかってきます。
病原菌が肉体の中に生きているので、感染した上で死んでしまうとゾンビ化してしまいますが、死ななければセーフ。つまり噛まれただけではセーフなゾンビなのです。
・武器が案外沢山あります。寝子島の民がやったら器用だったので、凶悪な改造武器を作ったりエアガンや3Dプリンタや鍛冶技術をあわせて銃器を作ったりもしています。物資の都合から量産はできないみたいですが……。
・電気が通っています。ガスと水道がちょっとキツいですが、あちこちの井戸水が生きていたりIHクッキングヒーターがあったりで案外切迫していません。
・食料は沢山あります。元々備蓄が沢山されていたのもありますが、自給自足できる子らが沢山いたようです。
最後に、多喜 勇生(裏)さんご出演ありがとうございました。
終末世界のちょっとクレイジーな日常感が出せましたね。
勿論これは例のひとつですので、設定をそのまま利用して頂いても、まったく別のアクションをかけて頂いてもOKです。
==============================