動物と暮らそう｜リアクション

動物と暮らそう

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　これは、もしもの寝子島の話。
　動物たちと一緒に暮らすことが当たり前になった、そんな世界のフツウの日々。

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　朝の寝子高。
　放課後まで動物たちを預ける小屋――といっても相当大きく、小屋というのは名前だけ――の前で、神野美野梨がシカを連れた男子生徒に声をかけている。
「この子の足の裏を見せていただける？　左の、後ろ足」
「あ、ああ」
　訝しげな顔つきをしつつも、男子生徒は身ぶりで足をあげるようシカへ伝えた。
　後ろへまわった美野梨が、やっぱりと小さく呟く。
「ガムがくっついてるわ」
「え、マジで」
　ひづめの裏には、確かにくすんだピンクの塊がへばりついていた。思わず、顔をしかめる男子生徒。
　動物交通が当たり前になってから、道路の清掃は以前より行き届くようになったし、ポイ捨ても減ったけれど。
　それでもやっぱり、マナーの悪い人というのは居るもので。
「ティッシュで取れるかな？」
「それより、油を使ったほうがいいわね」
「油？」
　そこで美野梨が取り出したのはは、サラダ油の小さな容器だった。ガムは油に弱いので、それを使って取り除こうというわけだ。
　ちなみにこのサラダ油は、こういう時の処置用に持ってきてあったものだ。
　数分かけて処置を済ませると、男子はお礼をいってシカを預けていった。
　入れかわりに、用務員のおじさんが声をかける。
「今日も精が出るねえ」
「研究のお礼のようなものですから」
　小屋に預けられた動物たちへと、視線を向ける美野梨。その目が、熱を帯びて輝く。
　預けられているのはさっきのシカの他にも、ロバやダチョウ、クマにポニー、チーター、ウサギにカピバラ等々、とかくたくさんの動物たち。
　こんなにたくさんの動物を研究できる機会、逃す手はない。
　そして代わりに、お昼や放課後のお世話や、さっきのシカみたいな健康チェックをさせてもらっている、というわけだ。
「おはようございまーす」
　のんびりとした声に、用務員さんと美野梨が振りかえる。
　ヘルメットを小脇に抱えた万条幸次と、ライオンのブロゥがやってくるところだった。
　大きくて立派で、たっぷりとしたたてがみの様子は、見るからに健康そのものといった具合。
「今日もブロゥは元気そうね」
「うん、特に変わった様子もないし、今日も元気だよ。な、ブロゥ」
　幸次が頭を撫でると、うなずくようにブロゥは軽く吼えた。

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