夏休み１日前！｜リアクション

夏休み１日前！

○終業式

　三年生の月守輝夜は友達と話していた。
「もう明日から夏休み。何をしようか考えるだけでわくわくするね」
　優しくのんびりした輝夜がそう言うと、
「でもその前に校長の話を聞かなきゃならないのよね……」
　友達はげっそりしたように言うのだった。
　
　仙藤蒼は終業式のため体育館へ向かった。
　三角眼鏡の校長、杉村小春先生の長ったらしい、もとい、ありがたいお話が始まった。
「長い休みの間は勉強や運動のチャンスざます。寝子中生として恥ずかしくない行動を……」
　皆が汗だくで耐える中、校長の話は容赦なく続く。
（暑い中をじーっと我慢して聴かなきゃならないのは、夏休みを前にしての試練と判っているけど）
　それで時間が早くなるわけでもないし、涼しくなるわけでもない。
　蒼は心の中でため息をつく。
（手持無沙汰だけど、こんなところでスマホのゲームで遊ぶわけにもいかないして、あーやっぱり地獄以外の何物でもない……）
　しかたがないので、隣にいる友達と適当に小声で暇つぶしに会話を交わして過ごすことにした。
「ねえ蒼、やっぱり夏休みはゲーム三昧？」
　尋ねてきた友達に蒼は答えた。
「そりゃそうでしょ。私からゲーム抜いたら何が残る？」
「そうよね」

　一方、輝夜はそんな時間を苦にしていなかった。
（いつもの校長先生の長い話も気にならないよ）
　だって心はもう夏休みに入っているから。
（宿題は早めに終わらせていっぱい遊びたいな）
　受験生だけど、輝夜の心は楽しいことでいっぱいだった。
（プールと海に泳ぎに行きたいし、面白そうな映画も公開されてるから観てみたい）
　そう思いながら、前のほうにいる友達の青木慎之介の姿を探す。
（何より気になるのが慎之介くんのこと。留学に行くって聞いてたけど、この前まだ何も決まってないって言ってたから期待しちゃったよね）
　もしかして同じ高校に行けるかもしれない。
（留学に行くって聞いた時はちょっとショックだったけど応援しようって気持ちを切り替えてたのに）
　ふらふら揺れる慎之介の言動に、輝夜の気持ちも振り回される。
（慎之介くんの本心聞きたいな）

「……では身体に気をつけて、有意義な夏休みを過ごすざます」
　長かった校長の話も、ようやく終わった。

　

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