耕作さんの畑で実ったトウモロコシ食って幸せになろう。｜リアクション

耕作さんの畑で実ったトウモロコシ食って幸せになろう。

「とんもろこし食い放題？！　だったら俺様に任せろー！　片っ端から料理してやるぜ」
　真央から連絡を受けたお好み焼きの店・『うさぎ屋』の宇佐見望月は、早速支度を開始した。
「うぇーい。網持った、でっけー鍋持った、リヤカーにブロック積んだ！　コレで何でも作れるぜ、いやーっほう！」

（叔父貴め……鼻歌なんぞ歌いおってからに、何を浮かれておるのやら）
　客からオーダーされた、ハート型お好み焼きをヘラで真っ二つに両断しながら、大田原いいなは片眉を上げた。
「いーな！　今日は店はバカ姉貴に任せて、いーなも行こうぜ、とんもろこし食い放題だぜ！？」
　望月がそう言った瞬間に、いいなは反射的に身を低くした。直後、いいなの頭の真上を通過して、ぶっ飛んできた座布団が、見事に望月の顔面にクリティカルヒットした。
　だが望月は一寸のけぞった程度で、へこたれない。いい笑顔。
「俺様一人じゃ重いしさ。手伝ってくれよ！」
　望月は何だかんだで、渋るいいなを、店から連れ出してしまうのだった。

　星ヶ丘。
「また、神魂か！」
　事情を聞いた新聞部部長・八神修は、目を鋭くした。だがトウモロコシを食べても周囲のものに、ひたすら感謝したくなる効果が及ぶだけ、と知ると力を抜いた。
「そういうことなら、いっそ楽しんでしまうのも、悪くないかもしれないな……」
「だろ？　行こうぜ、八神」
　ニッと友が笑えば、計画は実行に移される。同じ新聞部の椿美咲紀も誘うと、修はお抱え運転手の風間を呼び、自身もカメラを手にした。
「いい絵が撮れそうだからな。今日はゆっくり、トウモロコシを堪能しよう」
「わぁ、トウモロコシ！？　今日は、ラッキーカラーがイエローなんだよねっ♪　幸先が良いなー」
　お花が大好きで、趣味はガーデニングに家庭菜園という美咲紀。
「お野菜大好きだもの、喜んでいただきまーす。そうだ、お家で採れたプチトマトと、キュウリも差し入れしよっと。夏野菜は体の熱を取ってくれるから、暑い日にピッタリなんだよ」
「そういえば、聞いた事があるな。さすが椿だ、植物の知識では右に出るものはいないな」
　修の賛辞に、美咲紀の笑顔の花が開く。
「えへへ。すぐ戻るから、ちょっと待っててね」
　美咲紀が籠を手に、小走りに家庭菜園に向かう。

「おや、お揃いで。どちらにお出かけかな？」
　彼等に声を掛けたのは、お気に入りのキャスケットと、お茶の入った水筒、スケッチブックを手にした旅鴉月詠だ。
「おう、実はかくかくしかじかで。今、知り合い中心に声掛けてる所なんだけど、旅鴉も行こうぜ、きっと楽しいからさ！」
「なるほど。そう言う事なら、今日は予定を変更して、お相伴に預かるのも一興かもしれないね？」
「ああ、助けると思って、よろしく頼むぜ」
「こちらこそ。さて、そうと決まればせっかくの畑の恵みを、より一層美味しく頂くための手立ても、考えなければね」
　顎に人差し指を当てて、思考を練り始めた月詠に、修は興味を向ける。
「君が作るなら、さぞかし美味いものが出来上がるんだろうな。良かったら、俺も頂いて構わないかな？」
「遠慮はいらないよ、味わってもらってこその料理だし。腕によりをかけて作らせてもらうよ」
「ありがとう、今から本当に楽しみだ。同じ場所に向かうし、皆うちの車で一緒に行かないか？」
「ああ、助かるね。よろしく」

「はーい、お待たせしました～。早速、行こっ！」
　色鮮やかな新鮮野菜が詰まった籠を持ち上げて、美咲紀が満面の笑みを浮かべる。
　横付けされた車に乗り込むと、彼等も移動を開始した。

このページにイラストを設定する