その食物を口にした瞬間、老いた目は開けた。
世界はあまりに美しく、自分は何と実りある人生を送ってきたのだろうか。
日に焼け、皺がれた頬を、涙が伝った。
異変に気付き、どうしたと駆け寄る孫は、狂おしいほど愛おしい。
衝動を、全身で表現せずにはいられなかった。
夏。緑はいっそう濃く、日差しは眩しい。
いつものように変身し、翼を授り風を駆る。
カナリアとなった
桜井 ラッセルは、眼下・九夜山のふもとのトウモロコシ畑から聞こえる絶叫に、上空を旋回した。
「ピチュ、チュイ!?」
(なんだ、なんの騒ぎだ――?)
「孫よ! 生まれて来てくれて、ありがとー!! ワシはお前に、マジぞっこんラブちゅーじゃ!!」
「やめろ、ジジイ!! 暑さで脳ミソただれたか!!?」
あれは、確か
触手キャベツん時の、農家のファンキー爺とその孫……。
しつこくちゅっちゅしてくる爺に、中学生の孫が必死の抵抗を見せている。
ある意味いつも通りだが、様子がおかしい。
変身を解いたラッセルは、思い切って声を掛ける事にした。
「えーと、なぁ、何かあったのか?」
孫の方が答えた。
どうやら畑の作物が、また神魂の影響を受けたらしく、この有様だと。
「こんなハッピーになるんじゃ、売り物にならないし……。
良かったら知り合いを誘って、うちに食べに来ませんか?
せっかく育てたのに、捨てるのは勿体無いし。甘くて美味しいですから」
嫌じゃなかったら、お願いします。
そう頭を下げて頼まれると、お兄ちゃん気質のラッセル、弱かった。
「んー、なるほどな。了解、ちょっと皆に声掛けてみるぜ!」
メシータです。
トウモロコシを食べてハッピーになろう!
トウモロコシは食べると、ありとあらゆる事に対する感謝の念が沸いてきて、それを表現せずにはいられなくなります。
抵抗するには、舞台の公演中、ヒロイン役そっちのけで、好きだったあの子に告白するくらいの気合が必要です。
抗う必要は全くありませんが、逆らいたい人は、その気合をアクションに具体的にお書きください。
トウモロコシを食べた時の、感謝の表現には個体差があるので、あまり構えなくて結構です。(いっそ弾けたい人は別ですが)
ガイドの農夫は、元々があんな性格なので、ああなっております。
NPCの二人は拙作『キャベツ畑でつかまえて(物理)』と『ジャガイモ畑でつかまえて(精神)』にも登場していますが、知らなくても問題ありません。
■状況
農家の畑さんちの庭先です。トウモロコシはすでに収穫済み。
トウモロコシを調理するための器具は、余程特殊なものじゃなければ、一揃いあります。料理に使う器具、椅子やテーブル、また縁側も提供してもらえます。
■NPC
・畑 耕作(はた こうさく)
九夜山のふもとで、農家やってるファンキーな爺さん。現在、超ハッピー。
傍を通ると、感謝の気持ちから絡まれるかもしれません。
基本的には空気なので、関わるアクションがなければ登場しません。
・畑 そふと(はた そふと)
耕作の孫。13歳の、男子中学生。
基本空気ですが、必要があれば、手伝いや話し相手をしてくれます。
神魂に対する理解はあるので、ろっこんを使用しても大丈夫です。
【PL情報】
今回、神魂の影響を受けているのは畑(地面)の方で、トウモロコシは収穫後半日程置くと、ハッピー効果はなくなります。
それでは、ご縁がありましたら、よろしくお願いします。