温泉迷宮から脱出せよ！｜リアクション

温泉迷宮から脱出せよ！

●薔薇風呂での出会い

「はぁ……、この薔薇、綺麗ですね……」
　タッマーキは、湯に浮かぶ花弁の一枚を手にとって、そうっと口づけた。
　なぜか温泉地にいるのは若い女子ばかり。ということで、一人風呂を堪能しているのだ。
　鼻腔に届く、薔薇のかすかな香りと、花びらの温かく滑らかな感触に、唇が綻んだ――ところで。
　耳に届いたのは、キィキィと高い声。
「おや？」
　湯に入ったまま、振り返ると、そこには、バスタオル一枚の、四十九院鸞がいた。
「おや、鸞さんではありませんか……！」
「あらぁ～、ごきげんよう」
　鸞はにっこり唇を持ち上げて、タッマーキに微笑みかけてくる。
「ふふ、ごきげん麗しく……とも言っていられませんね」
　言いながら、タッマーキはすぐに湯船から出、鸞と猿の間に立ちはだかった。
　もちろん腰にはしっかりタオルを巻いて、自慢のプリ尻を隠している。
　だがそれを奪うべく、猿がキキィッと手を伸ばしてきた。
「おやおや、いたずらなお猿さんですね。ふふ……！」
　タッマーキは猿と見つめあったまま、背後の鸞に声をかけた。
「鸞さん、近くにチョコ風呂があります。避難なさってください。直ぐに私も向かいますから、ふふ……！」
「ええ、ありがとう」
　鸞の白い背中が去っていく。それを確認したところで、タッマーキは自らの腰から、バスタオルを外した。
「さて。私と勝負です……！
　両手に持ったタオルを、闘牛士のごとくひらひらさせて、猿をおびき寄せる。
「さぁ、奪ってみてください……！」
「キイイイッ！」
　猿はまっすぐに、タオルに向かって進んできた。それをひらりとかわして、タッマーキは猿の後ろに立つ。
　そのまま捕まえようとすると、猿の長い尻尾が、タオルをひっかけた。
「あっ……」
　手から離れて吹っ飛ぶタオル。
　猿もそっちに行くかと思いきや、なぜか敵は、タッマーキのオープンになった箇所に興味深々だ。
　それでも臆せず、タッマーキは猿に手を伸ばした。が、猿はタッマーキの背後に回り、尻尾でプリ尻をぱっちーん！
「あふんっ！　ああ、テクニシャンですね、あなた……！」
　タッマーキは顔を上気させ、ちろりと唇を舐めた。
「でも私だって、ヤればできるんですよ……！」
　タッマーキはうっすら微笑み、ハイスピードで猿を捕まえると、手刀で気絶させた。

　地面に猿を横たえて、タオルもしっかりまき直し、チョコ風呂へ向かう。
「……鸞さん、ご無事ですか？」
「ええ、もちろんですわぁ、あなたのおかげで」
　微笑む鸞の手を、恭しくとって、タッマーキは温泉から出た彼女の傍らに立った。
「それでは共に、いちご風呂を探しましょう……！」
「もちろん、ご一緒いたしますわぁ。でもその前に、チョコを落としたい、かも……」
　鸞が胸の谷間に溜まったチョコを指ですくい、唇へと持っていく。
　それをぱくりと咥える様を、タッマーキは微笑みと共に、見つめたのだった。