温泉迷宮から脱出せよ！｜リアクション

温泉迷宮から脱出せよ！

●家路を急ぐ羞恥な人々

　くらくらほわほわする頭で、それでも真白はなんとか猿を捕まえた。
「ふぅ……。何とか取り返せたよぉ」
　呟きながら、全裸ボディにタオルを巻き巻き。これでおっぱいもお尻もしっかり隠れて、とりあえず安心だ。
「よし、今度こそここから脱出を……」
　晶は、まだまだ温泉が続く先に目を向けた。この温泉地に入ってきたということは、どこかに出口だってあるはずなのだ。
「よし、頑張って出口を探……」
　そう、と言おうとしたところで、急に周囲の景色が歪んで見えた。
　めまい！？　と咄嗟に目をつぶって数秒後。

　気づけば真白は、元の世界に戻っていた。しかも。
「街中ー！？　私今、バスタオル一枚なのにー！？」
　思わず、自分の身体を抱きしめる。

　そのすぐ先では。
「う、うわぁぁぁぁ！！！　咲は何をして…と言うか、外！？裸！？」
　真白と同じくバスタオル一枚で、咲が悲鳴を上げていた。しっとり濡れた黒髪ポニテと、羞恥の涙で潤んだ赤い目が、薄桃にそまった白肌によく映える。
　が、咲は当然、見た目に似合う妖艶微笑を見せることなく、「どうしてこんなところに！？」とわたわたばたばた。
「い、いやぁぁぁ！！！　見ないでー！！！」

　同じく動揺している人物がもう一人。零葉である。
「ど、どうしてこんなところに……！？」
　酔いは一気にさめている。だからこそ、周囲の人の視線が痛いし、穴があったら入りたい。いやまず逃げないと……と勢いよく走り出しかけたところで。
　――バスタオルが、はらり。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ！！？」

　それに重なるのが、志桜里の悲鳴。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ！！？　SNSは！　SNSは駄目よ！」
　都市伝説になるまえに、逃げだしたいのが本音。でも向こうでは零葉が全裸でばたばたやっている。あれはホントにまずい、ぜったいまずい。温泉地であれこれしていたときより、はるかにまずい。
　志桜里は、地面に落ちていたバスタオルを拾うと、ぐるんと零葉に巻き付けた。
　そして。
「行くわよ！」
　涙目の咲と一緒に、脱兎のごとく、逃げだしたのである。

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