うみねこで夏の味覚を｜リアクション

うみねこで夏の味覚を

●真夏の昼の出会い

　楡宮遠海は、学校帰りにトボトボと夏の日差しに炙られながら歩いている。
　どんよりと沈んだ気持ちなので足取りはかなり重い。期末テストの成績が良くなかったからだ。
「こうなった理由はわかっているけど……」
　期末テスト期間中。
　学食の謎企画『灼熱カレーな四日間』で、テスト中にも関わらず食べに来た生徒が何人も。
　遠海もそのひとりで３日間も食べ続けた。
　それが原因か試験最終日１時間目の理科のテスト中にインドチックな音楽と歌声の幻聴が。
　それだけでなく、へそ出しベリーダンス衣装を身に纏い、たわわな胸を揺らして踊る自分の姿まで。
　カレーの匂い漂う妄想なんかに負けない！　とテストを受けるが、無情にもテスト終了が告げられた。
　我に返った時には既に遅し。三分の二が白紙状態。理科の成績はまさかの25点。
　落ち込みながら歩いていたこともあり、道に迷ってしまった。
　壊滅的な方向音痴は、気分の良し悪し関係ないようだ。気が付くと、いつの間にか漁港のはずれに。
「なんでこんなところにいるのよ。ああ、お腹空いた……」
　そんな時。側を通り過ぎたカップルが『うみねこ』の夏定食、美味しかったと話しているのを耳にした。
「すみません、そのお店の場所、教えてください」
　カップルに近づくなり、夏定食が食べられる『うみねこ』の場所を聞き出したのだが……迷ってしまった。
　どうしよう？　と途方に暮れていた時、暑さにフラついた李小麗とぶつかった。
「大丈夫？」
　ぶつかった小麗を支えながら、熱中症の症状が出たのかもしれないと心配に。
「ごめんなのだ。しゃおりー、『うみねこ』に行くところだったのだ」
　自分が行きたがっていた場所に行く人に会えてラッキー！　と遠海は心の中で大喜び。
「そのお店に行くんだったら、私も一緒に行くわ。美味しい定食があるって聞いたから。案内して！」
「い、いいのだ……」
　遠海が肩をガッチリ掴んで頼むので、断わりきれない小麗だった。

「暑いなぁ……『うみねこ』さん、賑わってるかな……？」
　せっかくだからご飯を食べに行こうと思い立った恵御納夏朝は、暑い中、足取り軽く『うみねこ』へ。
（素敵なお店と、美味しいものが待っているから……！）
　楽しいことを考えているうちに『うみねこ』前に到着。
　店内がどうなっているか気になるが、店の外で順番待ちをする客がいるので列に割り込んでの様子見はやめることに。
　お昼を食べ終えた客が「定食、美味しかったね」というのを聞き、賑わっているみたいで良かったと一安心。

　夏朝が安心したのと同時に、暑さ堪えてやって来た遠海と小麗が到着。
　期末試験の悪夢再びと思える苦行だわ……と、遠海は猛暑に挫けそうになり、小麗は暑さと空腹でめまいが。
「情けないのぅ。そんなことじゃ、ここの美味いカレーは食えんぞい！」
　俺のシーフードカレーや春限定メニューのカレー鍋が気に入り、常連になった鬼河内巌が腕組みして豪快に笑う。
　彼のカレーに対する思いは、夏の暑さよりも熱い。そのせいか、巌の周辺に熱気が籠もる。
「夏バテや熱中症防止にはカレーじゃ！　そう思わんか？」
　カレーは当分いいわ……と遠海はため息をつき、小麗は。暑い時には冷たいものがいいのだと思った。
　遠海と小麗から少し離れた場所にいた夏朝は、早くご飯食べたい……とじっと待つ。

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