うみねこで夏の味覚を｜リアクション

うみねこで夏の味覚を

●暑いけど頑張ります

　天満七星がお品書きを書いている頃、綾辻綾花とケンゾウ、総悟は定食の下拵えをしていた。
「総悟くん、ほぼ毎日アルバイトですか？」
「お店、去年も休み無しで営業していたから。今年はなるべく、手助けしたいと思ってね」
　魚戸夫妻と関わることが多いこともあり、総悟は夫妻の大変さを誰よりも知っている。
「じゃあ、なるべく私も来れるようにしなくちゃ」
　図書館に行ったり、本屋やカフェでバイトの予定だがお店が忙しそう……と気にかけ『うみねこ』のバイトを増やそうと考えた。
　２人の話を聞いたケンゾウは、他でもバイトしているのなら無理すんじゃねえ、と言った。
　口は悪いが、貴重な即戦力な綾花に熱中症等で倒れられては困る。
「お気遣い、ありがとうございます。その分、今日は一生懸命頑張ります」

　お品書きを書き終えた七星は、夏限定メニューもだが、お茶等も充実したほうがいいのでは、と思っていた。
　駄目でもともと、言ってみましょう、と提案を。
「外はすごく暑いですので、冷たいお茶をサービスするというのはいかがでしょう？」
　夏メニューのことしか頭になかった夫妻は、そこまで気を遣うことができなかった。
「……お前さんのいうことは一理あるな。客は暑い中、うちに来てくれるんだからな」
「七星ちゃんのお茶サービス、やってみようか」
　魚戸夫妻がＯＫしたので、冷たいお茶のセルフサービスを急遽、追加することに。

　冷たい麦茶や緑茶を作るには時間がかかる。できるだけ早く提供できるよう、さっそく準備を。
「私の提案を受け入れてくださり、ありがとうございます。お茶の葉といったものはございますか？」
　水出し用の麦茶パックなら……と、ハルコは自宅に一旦戻り、それを取りに行った。
　緑茶はおいてねえな、とケンゾウが言うので「では、私が買いに行ってきます」と七星は厨房を出て行った。
　ウーロン茶は飲み物メニューにあるので、それだけは用意せず。

　七星が額に汗を浮かべて買い出しから戻ると、総悟はお茶の葉が入った袋を受け取り、冷たいお茶の準備を。
「天満さん、美味しいお茶の作り方と淹れ方を教えてくれない？」
「いいですわ。では、ご一緒にご用意しましょう」
　その間、綾花はテーブルに箸入れを置いたり、椅子を整頓したり。
　魚戸夫妻は、定食やお造りをいつでも客にお出しできるよう厨房で準備中。
　下拵え等があらかた終わり、いつでも調理可能に。
　七星が和風メイドの衣装に着替え終え、厨房に戻ってきたのは『うみねこ』の営業開始５分前のこと。
「今日も忙しくなるだろうが、暑さに負けず頑張ってくれよ！」
　威勢の良いその一声が『うみねこ』開店の合図だ。

　開店時間と同時に、夏定食を食べに来た客がご来店。
「いらっしゃいませ。空いている席にどうぞ」
　接客担当の七星と総悟は注文を聞いたり、出来上がったものを運んだり。
　厨房ではケンゾウは休む間もなく注文された料理を汗だくで作り、ハルコと綾花は野菜を切ったり、盛り付けしたり忙しない。
　この日の気温。正午時点で３６度。火が絶えない厨房で調理する面々の体感温度はそれ以上のものだ。

「ぶあー……暑い……暑いのだ……何か冷たくて美味しいものが食べたいのだー」
　美味しいものといったらここなのだ！　と李小麗は暑いのを我慢して『うみねこ』へ。
　何か食べてからケンゾウとハルコのお手伝いをしよう！　と張り切りながら。
　暑いのだ！　と言っているが、小麗の元気と手伝う気持ちは暑さに負けていない。

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