真夜中の訪問者｜リアクション

真夜中の訪問者

　深夜に訪問してきた男、その姿を見てしまったマリエッタは悲鳴を上げそうになるのを懸命に堪えて、二階への階段に向かう。
「何か……」
　マリエッタははっとして、トイレへと駆けこんだ。
　使用前のトイレットペーパーを手に階段へ戻る。このトイレットペーパーを勢いよく転がし、階段全体を覆う。階段は暗い、足元が見えなければ滑って転ぶだろう。時間稼ぎになるかもしれない。
　その間に警察に連絡しようか？　そんなことを考えているうち、階段を上る音がし始めた。すぐに物凄い音がした。
　どうやら罠に引っかかって転落したらしい。
　そっと階段の下を覗くと、トイレットペーパーまみれになりながらもすぐにダメージを回復させ、上って来ていた。階段のトイレットペーパーはそれと同時に消えてしまう。訪問者の能力なのだろうか。
「ひいっ！」
　と悲鳴を上げて、マリエッタは部屋の中に閉じこもる。ふと室内で目に入ったのはタペストリーの横に貼ってあったお札だ。寝子島神社で買ったものである。
「まさかと思うけど」
　効果があるかもしれない。リケジョ（理系女子）だとは言え、今はこれにかけるしかない。
　マリエッタはお札をはがし、手元へ。その瞬間、お札が光を放ち、なんと分裂していたのだ。マリエッタの手の中でまるでセンスのようになっている。
「いける」
　マリエッタは自室のドアへ向かい、身構える。
　ドアをぶち破って入ってきた男に分裂したお札を投げつける。すると、つむじ風でも発生したかのようにお札が宙を舞った。
「札よ、この家を守って！」
　マリエッタが叫ぶと、札がまとまって、男の元へと飛んで行った。彼の体にペタペタと貼りつく。
　どうやら、動きを封じることが出来たようだ。
　今しかない。マリエッタはたまたま部屋に置いてあったほうきを手にした。
「えーい！！」
　身動きが取れないでいる男をほうきで叩きまくり、部屋から追い出す。それから、手の中に一枚残っていたお札を額に叩きつけてやる。すると、男はふらふらと立ち上がり、玄関の方へ逃げるように出て行った。
「やった……？　よかったぁ」