迷子はこちら、親御はどちら？｜リアクション

迷子はこちら、親御はどちら？

　龍目豪が海の家についた時、奥の席では白いワンピースの女の子が、スケッチブックにペンを走らせているところだった。
　その正面では、時折視線を投げかけられて落ち着かなさげに、それでいて期待には溢れた面持ちで葉月を見やる、小学生くらいの少女。
　珍しいところでスケッチしてるんだなー、と思いつつ、龍目は店の人に声をかける。

「迷子の届けなんか、出てないすかね？　ユキっていう女の子なんですけど」

　そう言って、龍目は手を引いている幼子を示し、店員に問いかける。

「いやぁ、うちには来てないなぁ。さっきも迷子の親を探している子なら来てたけどね」
　ほら、あそこの。
　と指し示されたのは三宅の方で、ちょっとだけ意外な心地がした。

「放送だけは一応しとくから、そこらで待っててくれていいよ」
　そう言ってくれたので礼の言葉を告げるとともに、龍目はユキと名乗る幼女のリクエストを聞き、オレンジジュースを注文する。

「暑かったもんなー、ゆっくり飲んで、水分補給するんだぜ」
　龍目がにかっとわらって見せると、女の子も嬉しそうに、微笑んできた。