迷子はこちら、親御はどちら？｜リアクション

迷子はこちら、親御はどちら？

　その日、佐藤瀬莉が海に来たのは、学校の友達数人と連れ立ってのことだった。
　夏の暑い日に学校の授業でプールに飛び込むのも捨てたものではないが、やっぱり皆で海に来るのはそれ以上に楽しいものだ。

　そんな瀬莉が着てきた水着は、フリルの多い２ピースの水着。白に近い薄青色の、お気に入り。
　スクール水着と違って、ちょっと成長の早い子と比べられなくてすむのもよかった。
　何が、とはいわないが。

　疲れた子は勝手に抜けては休み、休んではまた皆のところへ――と、遊び始めてしばらく。
「あたし向こうで休んでくるね～！」
　そう言って瀬莉が集団から離れた時のことだった。
　不意に、横合いから手を掴まれる。

「はわっ」
　いきなりのことに驚き振り払うと、そこには、５，６歳くらいの小さな女の子。
　手を振り払われたショックからか、はたまた最初からか。
　今にも泣きそうな顔で、瀬莉を見上げていた。

「あ、ごめんね！　どうしたの？」
　問いかければ、少女が小さな声で「お母さんがいないの……」と打ち明けてくる。

　迷子かぁ。

　困った、どうしよう。
「あー、泣いちゃダメダメ。あなたのお名前なぁに？」
　とりあえずええっと、監視員さんとかにお願いしたらいいかなぁ？

「じゃあアイちゃん、お姉ちゃんがママのところまで連れてったげる！　だから泣かないでー！」

　うん、大丈夫。多分お母さんもすぐ見つかるわ！
　何の根拠もなくそう確信し、アイの手を引いて監視員がいると思われる方向へ歩みだした。

　すぐに戻るつもりだったから、友人たちに声をかけることも――なかった。

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