「……ねぇ、知ってる?」
今年も夏である。
夏といえば海である。
即ち海の家で優雅に冷えたビールを飲むのである。うん、素晴らしい三段論法というべきじゃないか。そんな独言を心の中でつぶやいていると、不意に背後から声がした。
「砂のお城にね、食べられちゃうんだって」
女子が二人、昼日中から物騒な話だな、おい。
「え、食べるの? 城が? 何を? どこで消化すんの?」
そこかよ。
「ヒユだってヒユ。高校生なんだから、もうちょい勉強しよ?」
「やかましいですー。期末なんて受けなくていいからいいんですー。留年も落第も不合格もないんですー」
「で、話戻るんだけどね?」
「こらー、おいー、ひろえー」
古すぎるような気もするけど現役なような気もする微妙なところだった。女子高生が選ぶネタかというとどうかと思わなくもないが。しかしこうも暑いとビールが美味いなー。
「毎年、海が繁盛するころになると、迷子がでるじゃない?」
「出るね」
「その中に、いるんだって、コレが」
「お化け? へー……割と典型的な怪談じゃん?」
うん、そだな。しかし、迷子の中に、お化けかなんかがいる――ねぇ。ずいぶんかわいいんだろうな?
っと。あそこに見えるジャージは、寝子高に今年来た先生だっけか。確か――
川添 かおる……って名前だっけか? あれこれ拾っちゃ捨てしてるけど、ゴミ拾いかな? いや、それなら捨てないか。
「迷子なんだけど、いくら探してもお母さんが見つからなくってね」
あ、続くんですね。
「――でね、そのうちその子が泣き出したから、あやすために色々してあげて……それこそ、砂のお城つくって遊んだり」
「むしろあたしだと、泣き止まない子はいねーがぁああ! って言って出刃包丁で脅すかも」
おい。
「まぁそれはさておいて。で、なんでかしらないけど――その後、一緒に迷子を探してた人、いなくなっちゃうんだって」
「だからひろえー? 泣くぞー? 泣き止まないよー?」
やりとりに思わず笑みを浮かべていた頃合い。
不意に、海に面した入り口から、強い風が吹き込んでくる。
舞った砂に目を塞がれ閉じたまぶたを開いてみれば、入り口のところに人影が、二つ。
いかにも迷子と思える、ぐずった様子の男の子が一人。
連れ歩いている方はといえば、男の子の手を引きながら、店の中を見渡して一言。
「すみません――この子のお母さんを探しているんですが、こちらにいらっしゃいませんか……?」
まさか――ね。
ふと背後に視線をやると、いつの間にか女子高生らしき二人組は、声だけでなく、姿も消えてしまっていた。
あぁ、そうだろうとも。わかっていたから振り向かなかったんだ。きっと気まぐれに何か思いつて、ささっとお勘定して出ていっただけのはずさ。
決して怖いから、話を聞きつつも振り向かなかったとか、そういうことではないんだからな!
こんばんは。こんにちは。お久しぶりです、あるいははじめまして。
前のシナリオをご提供してから概ね一年が経過したでしょうか。らっかみは夏真っ盛りですね。リアクションを書くためのまとまった時間が確実に確保できない中、思えばだいぶ遠のいてしまっているようでした。
そのようなわけで、リアルの季節はコートが必須な時期ではございますが、寝子島はまだまだ真夏です。
やはり暑い夏には冷たい経験が一番でもありましょう。
そんな感じで、少し不思議な体験「も」できるシナリオをご用意してみました。
時節は夏のある日、何らかの理由で海に来たあなた(もしくはあなた方)は、迷子に手を引かれてしまいます。
どうしましょう。探すなり、ほうりだすなり誰かに押し付けるなり、色々やりようはあるかもしれません。
ただ、不思議なことに海水浴場のスタッフや最寄りの交番に連れて行こうとしても、留守だったりして会うことができない状況になってしまいます。
海岸の周囲には簡単な海の家がいくつか(プレイヤーのどなたかの店も出張出店してるかもしれませんが)ありますし、海岸沿いには多数の人が昼の間は海水浴を楽しんでいることでしょう。
海岸沿いの様々な施設(カルチャーセンターや猫恋の鐘やネコンビやら)へ親御さんを探し求めてあるくのもよいですし、海でそのまま遊んであげてお子さんの親御さんが来てくれるのを待つのもよいでしょう。
寝子島街道を渡ったりしたならば、様々なお店もあろうかと思います。
迷子の親御さんを探してどこまでいくのもおまかせいたしますが、子供はすぐにぐずってしまうので、連れて行く場所に合ったあやしかたを考えていただければ幸いです。
ちなみに迷子の親御さんが見つからないまま子供と遊び続けた場合――ちょっと怖い都市伝説的な結末を迎えることになるでしょう。その時にどういうリアクションをするのか、簡単に記載いただければと思います。
なお、砂のお城に食べられる(吸い込まれる)は一例ですので、迷子の子とのやりとりをした場所に合わせた何らかの結末をご用意したいと思います。
……え、そんな怖い目にあうより、彼女と海で適当に遊ぶのが一番です、迷子に頼られることなんてありませんって? それもまた結構な事かと存じます。ご希望いただければ可能です。(爆発しろという視線は降ってくるかもしれませんが)
【※1】迷子は一人ではありません。幼児だったり、小学生だったり、男の子だったり女の子だったりするでしょう。大体はアクションに適合させたいなと思いますが希望があれば伺います。(下記注の処理に伴い希望が叶えられない場合はございます)
【※2】GA指定がない場合、基本的に同じ時間、同じ場所において、本シナリオの参加者であるPC同士が同席することはありません。
【※3】ただし、「他PCとの交流希望」と記載がある場合、こちらで適宜マッチングさせていただきます。その場合迷子の子は共通となります。合致する(あるいは若干違うが概ね同等の)記載がない場合、単独行動を選択したものとして扱わせていただければと思います。
【※4】基本的に親御さんに見つけて欲しい場合は、「親が見つかった時のアクション」も記載ください。記載がない場合は見つからなかったものとして扱います。グループの参加の場合、どなたか一人が書いていただければ結構ですし、交流希望でマッチングした相手が、親が見つかった時のアクションを記載している場合、記載がないPC様でも、親御さんが見つかった結果となることがございます。
【※5】そもそも迷子と遭遇しないアクションもOKです。その場合、「迷子には邪魔されません」と記載ください。誰かと二人で夕日を見ながら猫恋の鐘を鳴らすなり、ナンパしまくった挙げ句ふられ続けて一人夕日に向かってバカヤロー! と叫んでいても問題ナッシングです。
【※6】川添 かおる先生は美術の課外講座の一貫だったり、部活動の一貫だったりでまた海に素材を拾いにきたり、スケッチをしたりしにきているようです。先生とふれあいたい場合はその旨アクションに記載いただいたら対応可能となります。(その他のNPCについても、可能な範囲で対応したいと思います。過去にそのNPCと絡んだシナリオがあれば、参考までに教えていただけると嬉しいです。)
以上、注意書きがあれこれと長くなりましたが、よろしければ、皆様のご参加をお待ちしております。