迷子はこちら、親御はどちら？｜リアクション

迷子はこちら、親御はどちら？

　タイラ・トラントゥールが海岸に来たのは、夏休みの課題である自由研究の下調べのためだった。
　海岸の様々な漂流物の調査でもしようか……。
　ぼんやりそんなことを考えて歩いていた彼の手が握られたのは、すれ違った子供をそのままスルーしようとした時のことである。

「なんだお前は！？」
　思わず振り払った手は、今まさにスルーしかけた、まだ５、６歳程度に見える女の子。

「パパァ……」
　振り払われたショックからだろうか。
　泣き出しながらも、がっつり掴み直してくる。
　両手で。

「ボクはお前の親ではないぞっ！　迷子なら海水浴場の本部にでも行くんだ！」
　ウワァァァン！！
　益々泣きだす子供。それでも手を話してくれる気配は微塵もない。
　じろじろと、周りからは妹をいじめるお兄ちゃんかしらという視線が降ってきて。

　いや違う、違うんだ。

　思いを言葉にしても無駄なのは、なんとなく把握できてしまった。

「ああもう、わかったわかった！　わかったから泣き止んでくれ！　本部に連れて行ってやるから！　ほらいくぞ」

　とりあえず本部なら呼び出しくらいはかけてくれるだろう。
　そのまま預けてしまってもいい。
　そんなことをぶつくさと呟きながら歩いているタイラはまだ知らない。

　何故か、海水浴場の管理本部には誰もおらず、待てど暮らせど担当も帰ってこず。

「職務怠慢だぞ！！」

　と叫ぶ羽目になることなど、まだ知らない。