- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
７月の☆ハッピーバースデー
●７月３０日 ～夏朝と夏夜のＢｉｒｔｈｄａｙ～
「さてと。服はこれでＯＫかな」
夏朝は私服に着替えると、鏡の前でチェックを終えた。
今日は自分たちにとって特別な１日だ。８月がすぐそこに迫り、寮の外でうるさく鳴く蝉の声も、まるで今日は自分たちの誕生日を祝福する声に聞こえる。
耳鳴りの調子も大分いい。視界の具合も良好だ。
猫パペットをお供に、よそ行きの靴を履いて、夏朝は部屋を後にする。
「さあ行こう、夏夜ちゃん」
この体に宿るもう一人の自分に、夏朝は静かに呼びかける。
クールで気まぐれな現実主義者の彼女にとっても、今日は大事な一日だ。
宿題は終えた。寮への連絡も終えた。
これで後は、行くだけだ。
星幽塔第一階層の城下街、両親の待つ場所へ。
―
メールに指定のあった場所へと辿り着いたのは、それから程なくしてのことだ。
空気も、匂いも、言葉も、行きかう人々。
何もかもが夏の寝子島とは違う異世界で、夏朝は両親が来るのを待っている。
メールにあった指定の時刻まではあと数分。そろそろ二人も来るはずだ。
長い猫のマフラーに顔を埋め、辺りをそれとなく伺う夏朝。
この姿でいると、まるで本物の盗賊になったようだ。
不埒な奴が襲ってきたら、猫の手を象った金色の戦輪が容赦なく返り討ちにするだろう。
「今は……平穏みたい。良かっ……あ、二人とも来た！」
視線の先には、夏朝の両親――恵御納 久隆と恵御納 理沙がいた。
「すまない、遅れたかな？」
「ごめんなさい、少し迷っちゃったわ」
「大丈夫。じゃあ行こう、お父さん、お母さん」
城下町をのんびりと歩きながら、親子はのんびりと話に花を咲かせた。
今までのこと、これまでのこと――。
普段なかなか顔を合わせることが出来ないだけに、理沙はとりわけ娘たちの話を喜んで聞いていた。
（本当に、大きくなった）
久隆はそんな二人の会話を静かに背中で感じながら、とっておきの場所へと彼女たちを案内していく。
「さあ、着いた」
どれほど歩いただろうか、夏朝と理沙が辿り着いたのは、２階建ての家だった。
最初に第一階層を来訪した時に、久隆が購入した家だという。
「すごい……」
「でしょう？ 私も初めて知ったときはびっくりしたわ」
知ったのは今日なんだけど、そう言って理沙は笑った。
―
居間にはテーブルと、それを囲む５つのイス。
テーブルには美味しそうな料理とケーキが並んでいる。
いずれも両親が作り、飾り付けたものだった。
料理はお祝いの洋食だ。
どれも夏朝と夏夜の好物だった。
きっと理沙が寝子島で買ってきて、出来立てを用意してくれたのだろう。
『もし僕の事も祝ってくれるなら冬夜の席も用意してくれると嬉しい』
そんな夏夜の言葉を思い出しながら、理沙は５人分の食事をテーブルに並べていた。
「ありがとうお母さん。僕、嬉しいよ」
心から出た感謝の言葉に、静かに涙ぐむ理沙。
それを見た久隆は、パンと手を叩いて、
「さあ、続きは皆で食べながら話そう。時間はいっぱいある」
こうして、誕生日の宴が始まった。
母の手料理は、本当に美味しかった。
始めてきたはずの家が、まるでずっと自分の住処だった、そんな気持ちになる味。
きょうだいたちとも会話を交わしながら、５人の夕餉はゆっくりと流れていく。
「誕生日おめでとう、夏朝……夏夜も」
「夏朝ちゃん、夏夜ちゃんも……お誕生日おめでとう～！」
両親の笑顔を見ているうち、ふと夏朝は視界がぼやけるのに気づいた。
「そっか……今日、僕の……『僕等の』誕生日なんだ」
体と魂を共有している夏夜もまた、今日が誕生日なのだ。
「夏夜ちゃんは一緒に祝えなくてごめんね……『２人一緒に』祝える日が来るって信じてるわ！」
久隆は、そんな理沙の言葉に、黙って静かに頷く。
夏朝を迎えに行く前に、二人は話し合って決めていた。
（いつの日か『普通』に戻り、塔にも来れなくなるかもしれない）
今だからこその形で、久隆と理沙は娘『２人』の誕生日を祝おうと。
――夏朝が得た記憶は、僕が後から思い出せる。
――だから、父さんと母さんは夏朝を祝ってあげてほしい。
以前密かに連絡をとった夏夜の言葉を、久隆は思い出す。
（夏夜ちゃんは僕の中にいるし、冬夜君は星幽塔にいないかもだけど……）
けれど、と夏朝は思う。
決まった未来なんてひとつもない。
自分の望む未来を……お父さんと、お母さんと、夏夜と冬夜と、そして自分で。
「５人一緒に座って祝える日を、いつの日にか叶えたい」
「ああ。全員で祝える日を願って……私も出来る限りの尽力をしていきたい」
「ええ、きっと……！」
「ありがとう、お父さん、お母さん。僕は必ず叶えてみせる！」
両親とそして大事なきょうだいに誓って。
夏朝は、１７本のろうそくを吹き消すのだった。
「さてと。服はこれでＯＫかな」
夏朝は私服に着替えると、鏡の前でチェックを終えた。
今日は自分たちにとって特別な１日だ。８月がすぐそこに迫り、寮の外でうるさく鳴く蝉の声も、まるで今日は自分たちの誕生日を祝福する声に聞こえる。
耳鳴りの調子も大分いい。視界の具合も良好だ。
猫パペットをお供に、よそ行きの靴を履いて、夏朝は部屋を後にする。
「さあ行こう、夏夜ちゃん」
この体に宿るもう一人の自分に、夏朝は静かに呼びかける。
クールで気まぐれな現実主義者の彼女にとっても、今日は大事な一日だ。
宿題は終えた。寮への連絡も終えた。
これで後は、行くだけだ。
星幽塔第一階層の城下街、両親の待つ場所へ。
―
メールに指定のあった場所へと辿り着いたのは、それから程なくしてのことだ。
空気も、匂いも、言葉も、行きかう人々。
何もかもが夏の寝子島とは違う異世界で、夏朝は両親が来るのを待っている。
メールにあった指定の時刻まではあと数分。そろそろ二人も来るはずだ。
長い猫のマフラーに顔を埋め、辺りをそれとなく伺う夏朝。
この姿でいると、まるで本物の盗賊になったようだ。
不埒な奴が襲ってきたら、猫の手を象った金色の戦輪が容赦なく返り討ちにするだろう。
「今は……平穏みたい。良かっ……あ、二人とも来た！」
視線の先には、夏朝の両親――恵御納 久隆と恵御納 理沙がいた。
「すまない、遅れたかな？」
「ごめんなさい、少し迷っちゃったわ」
「大丈夫。じゃあ行こう、お父さん、お母さん」
城下町をのんびりと歩きながら、親子はのんびりと話に花を咲かせた。
今までのこと、これまでのこと――。
普段なかなか顔を合わせることが出来ないだけに、理沙はとりわけ娘たちの話を喜んで聞いていた。
（本当に、大きくなった）
久隆はそんな二人の会話を静かに背中で感じながら、とっておきの場所へと彼女たちを案内していく。
「さあ、着いた」
どれほど歩いただろうか、夏朝と理沙が辿り着いたのは、２階建ての家だった。
最初に第一階層を来訪した時に、久隆が購入した家だという。
「すごい……」
「でしょう？ 私も初めて知ったときはびっくりしたわ」
知ったのは今日なんだけど、そう言って理沙は笑った。
―
居間にはテーブルと、それを囲む５つのイス。
テーブルには美味しそうな料理とケーキが並んでいる。
いずれも両親が作り、飾り付けたものだった。
料理はお祝いの洋食だ。
どれも夏朝と夏夜の好物だった。
きっと理沙が寝子島で買ってきて、出来立てを用意してくれたのだろう。
『もし僕の事も祝ってくれるなら冬夜の席も用意してくれると嬉しい』
そんな夏夜の言葉を思い出しながら、理沙は５人分の食事をテーブルに並べていた。
「ありがとうお母さん。僕、嬉しいよ」
心から出た感謝の言葉に、静かに涙ぐむ理沙。
それを見た久隆は、パンと手を叩いて、
「さあ、続きは皆で食べながら話そう。時間はいっぱいある」
こうして、誕生日の宴が始まった。
母の手料理は、本当に美味しかった。
始めてきたはずの家が、まるでずっと自分の住処だった、そんな気持ちになる味。
きょうだいたちとも会話を交わしながら、５人の夕餉はゆっくりと流れていく。
「誕生日おめでとう、夏朝……夏夜も」
「夏朝ちゃん、夏夜ちゃんも……お誕生日おめでとう～！」
両親の笑顔を見ているうち、ふと夏朝は視界がぼやけるのに気づいた。
「そっか……今日、僕の……『僕等の』誕生日なんだ」
体と魂を共有している夏夜もまた、今日が誕生日なのだ。
「夏夜ちゃんは一緒に祝えなくてごめんね……『２人一緒に』祝える日が来るって信じてるわ！」
久隆は、そんな理沙の言葉に、黙って静かに頷く。
夏朝を迎えに行く前に、二人は話し合って決めていた。
（いつの日か『普通』に戻り、塔にも来れなくなるかもしれない）
今だからこその形で、久隆と理沙は娘『２人』の誕生日を祝おうと。
――夏朝が得た記憶は、僕が後から思い出せる。
――だから、父さんと母さんは夏朝を祝ってあげてほしい。
以前密かに連絡をとった夏夜の言葉を、久隆は思い出す。
（夏夜ちゃんは僕の中にいるし、冬夜君は星幽塔にいないかもだけど……）
けれど、と夏朝は思う。
決まった未来なんてひとつもない。
自分の望む未来を……お父さんと、お母さんと、夏夜と冬夜と、そして自分で。
「５人一緒に座って祝える日を、いつの日にか叶えたい」
「ああ。全員で祝える日を願って……私も出来る限りの尽力をしていきたい」
「ええ、きっと……！」
「ありがとう、お父さん、お母さん。僕は必ず叶えてみせる！」
両親とそして大事なきょうだいに誓って。
夏朝は、１７本のろうそくを吹き消すのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年01月05日
- 参加申し込みの期限
-
- 2019年01月12日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2019年01月12日 11時00分
