４人がもう一度よく探してみよう、と話していると……、ひょっこり現れる者がいた。つんつんヘアーが目立つ竜世である。
「なんだ、竜世か……って、待て。それは……！」
「なーなー！　これすっごくひんやりするぞ！　触ってみろよ！」
　きらっきらな目で差し出されるスライム（大）にタイラは思わず声を荒上げる。萌はさりげなくユウと葉月と共に下がっている。
「そんな得体の知れないモノに触るバカがいるか！　さっさと捨ててこい！」
「だいじょーぶ！　足とか他のとこもひんやりだし……ひんやり？」
　タイラに言われ苦笑する竜世だったが、なんかぷるぷるしたものを直接足に感じていた。よく見れば滴り落ちたスライムが彼のズボンを溶かしていたのだ！
「うわああ！？　って服！せっかくの制服が！？」
　滴り落ちたスライムは、竜世の肌を滑り、もにゅもにゅと制服を溶かしていく。竜世は驚いて思わずスライムを投げつける。再び上がるタイラの怒り声。
「スライムは服を溶かす……つまり、服以外は溶かせないという事！」
　萌がちゃんすとばかりに用意していたビート板を盾にタイラを庇う！　防がれたスライムは飛び散り、様子を伺っていた葉月の水着とジャージに穴をあける！
「まぁ……。溶けてしまったのね」
「ごめん！　キミに飛んじゃうなんて……」
　萌が慌てて様子を見るが、同時に上着が外れ萌のボロボロな水着姿がさらされる！
「！！」
　目撃してしまったユウは咄嗟に鼻を押さえ後ろを向く。鼻血は出ていないようだが、中々に刺激的な恰好だった。だが、タイラと竜世はそれどころではない！　残ったスライムが分裂したり、飛び散ったのが戻ってきたりで竜世（の服）のHPはギリギリである！　どんな状況かは察して欲しい！
「うぅ、こっちからさわるのは楽しいけど勝手に動かれるとへん…ぞぞぞってするっ～！」
「だから言っただろうがこのトリ頭ぁああー！！」
　慌てるタイラはなにか使えないかと周囲を見渡す。と、そこで目に入ったのは、ホースを持った武道！
「すまない！　こいつに放水をぶつけてくれ！　スライムが……！」
「そーいう事ならお兄さんにまっかせなサーイ☆」
　タイラと武道の会話で察した葉月がそつなく蛇口へ向かう。
「もう少し強めにするわね」

　――ぶしゃあああああ！

　水しぶきが派手に飛び散り、スライムが剥がれていく！　その様子を見ていたタイラたちだが、その視線の先に見えたカラフルな短冊状のモノに目が釘付けとなる。
「竜世、動くな」
「へ？」
　タイラがもぞもぞする竜世に言い放ち、きょとん、とする竜世。だが、その背中にはチケットを内包したスライムがへばりついていたのだ！
「おとなしくしてて！」
「頼む！　夏休みがかかってるんだ！」
　萌とユウに確保され、背中を向かせられる竜世は「へ？　何？」と何度もキョロキョロ。タイラはおそるおそる近づいて手を伸ばす。が、足元に感じる粘着質……。どうやらスライムの破片が迫っているようだ！
「水で飛ばしても迫るか……っ！」
　タイラは歯を食いしばって払い、竜世の背中についたチケット入りスライムに手を突っ込んだ！
「にゃぅ？！　擽ったいっ！！」
「黙ってろ！　とってやるから！」
　声を上げる竜世にタイラが怒鳴る。そして気合と共にチケットを握ったままスライムから手を引き抜いた！
「「おおっ！」」
「チケット、確保！！」
　ユウと萌が感心する中、タイラはぐっ、とこぶしを握り締める。と、スライムはするり、と竜世の背中から滑り落ち、さらりと水へと変化した。それは他の場所でもおなじだった。
「……チケットさえ見つかれば、問題解決だったのね……」
　葉月は感心したようにぽん、と手を打った。
「プールの方は落ち着いたようだネ☆　俺は更衣室掃除が無事に進んでいるか見てこようかな」
　武道が飛んできた水を拭いながら言う。だがその姿は……競泳用ブーメラン水着一丁である。あれやこれやで掃除に勤しんでいたら洋服が撃沈してしまったようである。それでもブーメランは強かった。ブーメランは武道のトレードマークと言わんばかりにスライムに勝ったのである。実際凄い。

　こうしてプール掃除も無事に（？）終わったものの……、この２人はというと……？
「これは、どういうことかな？」
　更衣室にて、なぜか出て来たえんじ色に黒いレースのおしゃれな下着に、秘月が食いついた。実を言うと、志桜里が二人の共同お財布からこっそり買っていたものである。
　ちなみに、今の体勢はいわゆる壁ドン的な体勢で問い詰めている。
「こ、これは……？！」
　慌てて隠そうとしたが、するりと奪われてしまう。秘月はむすっ、とした顔で下着を見……、志桜里が事情を説明すると、下着がなかなかいい値段であることを見抜き、にやり、と笑った。
「いいだろう、しおパン君夏休みからお仕置きだ。暫く私の奴隷になってもらおうか？」
「このッ、帰ったら覚えてなさいよ秘月……！」
　ぐっとこぶしを握り締め、睨みつける志桜里。果たしてどうなったのかは……不明である。

　そんな騒動を尻目に、月詠は封印を解除。プールには水が戻っていく。スライム状で出てきた水はプールへ落ちた瞬間普通の水に戻り、きらきらと輝いていた。

プール掃除：ミッションコンプリート！
更衣室掃除：ミッションコンプリート！

タイラ「……これは夢だこれは夢だこれは夢だ……」
武道・コル・紫苑「いいえ、現実だ（よ/ですよ）！」
桜「フツウなんて、大っ嫌いだぁ！！」（ぐすん）