灼熱！　激辛！　真夏の我慢大会！｜リアクション

灼熱！　激辛！　真夏の我慢大会！

　楡宮遠海は天啓だと思った。これほどまでに自分の才覚を活かせるイベントがあるだろうか、と。
「５万円もあれば、新しいショルダーキーボードが買える……！　海の幸もいっぱい食べられる……！」
　痩せの大食いを自称する楡宮にとって、これは参加しない手はなかった。
「５万円もお魚も逃がさないんだからっ！」
　ぐぐっと拳を天に突き上げて気合充分だ。

　羽生碧南も、賞金５万円に魅力を感じて参戦した挑戦者だ。
「賞金５万円！　これで乙女ゲーの新作が予約特典付きでざっと６本は買える！　これに挑まない手はない！」
　海の幸は、まぁ、食費が浮くよねってことでＯＫ。
「ああ、夏休み中に今から積んである乙女ゲー消化しないと。新作がプレイできないよね……！」
　既に何故か勝利を確信している模様の羽生。何か秘策があるのだろうか？

　檜扇舞華は半袖白ブラウスにリボンタイ、そしてミニスカート姿の女子高生スタイルで会場にやってきた。
「今朝、いきなり御主人に出場しろと言われて来てみましたが、参加者が結構いることに驚きを隠せませんね……」
　舞華は旅鴉の専属メイドである。今回のように主の気まぐれで色々と命令されることは慣れっこなのだが、今回は特に突飛であった。
「や、振られたら出ないわけにもいかず、チャンネル動画で動画視聴者アップも図れますし、ありがたいのですが……。卵とはいえ、声優のあたしに激辛とかどうなのとは思いますが……」
　喉のダメージを心配しながらも、それはそれ、と私情を捨て去るメイドの舞華。
「まぁ、動画再生数を稼げるようなリアクションを魅せてゆくことを第一に考えましょうか」
　だがこの後、舞華は主人の真の目的を知ることになろうとは、思ってもいなかっただろう。

　水守流は既に猛暑に体力を削られながらも賞金５万円を求めて会場入り。
「うおー！　賞金５万円だって？　こりゃやるっきゃねぇぜ！　新しいルルブ（※ＴＲＰＧのルールブック）とサプリを買うぜ！　新しいゲームを買うぜ！」
　ゲーム全般を好む彼にとって、現金は非常に魅力的。いくらあっても足りない。むしろ５万円と言わず５０００兆円欲しい。
「でも本当に暑すぎる……。あそこの救護班のテントで涼んでよう。……ん？　あの怪しい小屋は何だ？」
　水守は鏡のような壁に囲われた特設の小屋を見付けるが、このときはすぐに意識の外に追いやってしまったのだった。

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