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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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僕の歌は君の歌
「すげー……」
と一言呟いたきり、クラスメイトの男子はリモコンをテーブルに戻し、
「そういうの……詳しいの？」
同じくクラスメイト女子は口を半開き、まばたきすら忘れたみたいに。
「そういうの？ You Know?」
吉住 志桜里は吼える。
「This is HIP HOP!!」
ファーストフードが一次会、カラオケ店舗が二次会。
カラオケボックスの一室、なんかの打ち上げの顛末。
誰かが吉住 志桜里に渡したのはリモコンとマイク、そこまではよくある話だったはず。
ところがそれが激変！ 志桜里の選曲が表示された瞬間！
「なにこれヒップホップじゃね？」
誰かが言った。
「入れ間違いじゃね？」
別の誰かが言った。
「ノー、ニエット、あるいは『いいえ』！」
マイクを握り志桜里は立つ。
「私の選曲です。Weeeest Side!!」
そうして西海岸（ウェッサイ）イズム寝子島魂（ソウル）の、超絶フロウをぶちかましたのだった。
現代（いま）のカラオケにはどんな曲もあるのであなどれない。
本国ならP音混じりのギャングスタラップ、これを立て板に水、志桜里は堂々歌いきったのである！ 言葉のひとつとて取りこぼすことなく。
終わって髪をかき上げ、彼女がテーブルにマイクを置いて、それでもなお数秒たって、ようやく男子生徒が言ったのが冒頭、
「すげー……」
だったというわけだ。
「いかがしましたか、you better know ma steelo――」
志桜里が声をかけたところで、皆身じろぎもないのだ圧倒されて。
歌い手がいなくなった次の曲のインストが、ただだらだらと流れ続けた。
志桜里が悠然と手にしたグラスは炭酸水、時間の止まった世界でただ一人、動くことのできるエスパーのように。
私の好み、私の流儀。お見知りおきをと言わずとも、省みることなく通すもの。
翌日。
寝子高の武道場に志桜里は入った。
体操服。長い脚がすらりと伸びる。
単身だ。
首から提げているのはスマートフォン、無線ヘッドセットを耳につける。
外は猛暑、いくつかの部活は休みだ。
――そう、ちょうど今のような時に丁度良く。
PLAYと書いたタッチパネルに触れた。
西海岸のギャングスタ・ラップが奏でるフロウ。
ゆったりしたリズムと侮るなかれ、BPMの速さと強さはまるきり別だ。
鋭く手刀（しゅとう）。
受け流して叩きつけるところまで一動作。
肘、拳、蹴りつけて踏む。
これが志桜里お気に入りの鍛錬だ。
攻撃的なライムに増幅された気迫、乗せる一挙一動は思い浮かべる敵のすべてを砕く、そんな空想を奏でるラップと具現化する体躯の融合。
「なんだあ？」
からりと戸が開く。
のそりと入ってきた、誰かが。
元辻投げ少女こと詠 寛美。色々噂は聞いている。
「せっかく開いてると思ったのによ。まあいいか」
胴着姿の寛美は柔軟体操を、ついで基本運動を開始する。
動きからして空手と柔道をミックスしたもののようだ。
――ソロに飽きれば、相手を頼むのもまた一興。
武人同士なら、体同士でするのがいわばサイファー――。
寛美がちらりと視線を向ける。
空気の流れを感じたか。
「いかがです」と志桜里は呼びかける。
「音楽に乗せた手合わせも格好がついて楽しくはありませんか」
ヘッドセットはもう外している。
戸惑うどころか寛美の答えは「そいつを待ってた」なのだった。
出力をスマートフォンのスピーカーに切り替え、1セッションがたちまち始まる。
はじめの合図はない、審判もない、終わりも始めも自分たちで決めればいい。
もつれ合うさまは二匹の獣。
あるいは抜き身の鉈と鉈。
淑やか顔を獰猛に化かし牙剥く程、ビートに乗せて燃え上がるヒート、ダウンは取らず勝ち負けはビート・ダウン、ぶっ倒すまで続く鉄拳のラッシュかます。
それが志桜里で。
流れる動きはまるで水、されど巻き起こす投げの渦（うず）、縦横無尽に関節技、切り替え繰り出す肘と膝、正拳連打を受けて受けて受けて受けてなお足払い。
それが寛美だ。
寛美の粘っこい寝技をようやく脱し、どたっと志桜里は仰向けになり、そのまま起き上がらない、大の字で。
「いい運動になりました」
「ああ……俺も」
それだけ言うのが精一杯、寛美の息は荒い。
さりとて志桜里とて疲労困憊、これ以上仕掛ける気はない。
そのまま立ち上がって礼して、籠もりきった熱を抱えたまま更衣室へ。
汗みずくの体操服は下着含めすべて脱ぎ棄てる。
シャワー室、冷水で一気に冷やす。
これが何より涼しく、心地好い瞬間である。
冷たい水に打たれながら志桜里は目を閉じた。
と一言呟いたきり、クラスメイトの男子はリモコンをテーブルに戻し、
「そういうの……詳しいの？」
同じくクラスメイト女子は口を半開き、まばたきすら忘れたみたいに。
「そういうの？ You Know?」
吉住 志桜里は吼える。
「This is HIP HOP!!」
ファーストフードが一次会、カラオケ店舗が二次会。
カラオケボックスの一室、なんかの打ち上げの顛末。
誰かが吉住 志桜里に渡したのはリモコンとマイク、そこまではよくある話だったはず。
ところがそれが激変！ 志桜里の選曲が表示された瞬間！
「なにこれヒップホップじゃね？」
誰かが言った。
「入れ間違いじゃね？」
別の誰かが言った。
「ノー、ニエット、あるいは『いいえ』！」
マイクを握り志桜里は立つ。
「私の選曲です。Weeeest Side!!」
そうして西海岸（ウェッサイ）イズム寝子島魂（ソウル）の、超絶フロウをぶちかましたのだった。
現代（いま）のカラオケにはどんな曲もあるのであなどれない。
本国ならP音混じりのギャングスタラップ、これを立て板に水、志桜里は堂々歌いきったのである！ 言葉のひとつとて取りこぼすことなく。
終わって髪をかき上げ、彼女がテーブルにマイクを置いて、それでもなお数秒たって、ようやく男子生徒が言ったのが冒頭、
「すげー……」
だったというわけだ。
「いかがしましたか、you better know ma steelo――」
志桜里が声をかけたところで、皆身じろぎもないのだ圧倒されて。
歌い手がいなくなった次の曲のインストが、ただだらだらと流れ続けた。
志桜里が悠然と手にしたグラスは炭酸水、時間の止まった世界でただ一人、動くことのできるエスパーのように。
私の好み、私の流儀。お見知りおきをと言わずとも、省みることなく通すもの。
翌日。
寝子高の武道場に志桜里は入った。
体操服。長い脚がすらりと伸びる。
単身だ。
首から提げているのはスマートフォン、無線ヘッドセットを耳につける。
外は猛暑、いくつかの部活は休みだ。
――そう、ちょうど今のような時に丁度良く。
PLAYと書いたタッチパネルに触れた。
西海岸のギャングスタ・ラップが奏でるフロウ。
ゆったりしたリズムと侮るなかれ、BPMの速さと強さはまるきり別だ。
鋭く手刀（しゅとう）。
受け流して叩きつけるところまで一動作。
肘、拳、蹴りつけて踏む。
これが志桜里お気に入りの鍛錬だ。
攻撃的なライムに増幅された気迫、乗せる一挙一動は思い浮かべる敵のすべてを砕く、そんな空想を奏でるラップと具現化する体躯の融合。
「なんだあ？」
からりと戸が開く。
のそりと入ってきた、誰かが。
元辻投げ少女こと詠 寛美。色々噂は聞いている。
「せっかく開いてると思ったのによ。まあいいか」
胴着姿の寛美は柔軟体操を、ついで基本運動を開始する。
動きからして空手と柔道をミックスしたもののようだ。
――ソロに飽きれば、相手を頼むのもまた一興。
武人同士なら、体同士でするのがいわばサイファー――。
寛美がちらりと視線を向ける。
空気の流れを感じたか。
「いかがです」と志桜里は呼びかける。
「音楽に乗せた手合わせも格好がついて楽しくはありませんか」
ヘッドセットはもう外している。
戸惑うどころか寛美の答えは「そいつを待ってた」なのだった。
出力をスマートフォンのスピーカーに切り替え、1セッションがたちまち始まる。
はじめの合図はない、審判もない、終わりも始めも自分たちで決めればいい。
もつれ合うさまは二匹の獣。
あるいは抜き身の鉈と鉈。
淑やか顔を獰猛に化かし牙剥く程、ビートに乗せて燃え上がるヒート、ダウンは取らず勝ち負けはビート・ダウン、ぶっ倒すまで続く鉄拳のラッシュかます。
それが志桜里で。
流れる動きはまるで水、されど巻き起こす投げの渦（うず）、縦横無尽に関節技、切り替え繰り出す肘と膝、正拳連打を受けて受けて受けて受けてなお足払い。
それが寛美だ。
寛美の粘っこい寝技をようやく脱し、どたっと志桜里は仰向けになり、そのまま起き上がらない、大の字で。
「いい運動になりました」
「ああ……俺も」
それだけ言うのが精一杯、寛美の息は荒い。
さりとて志桜里とて疲労困憊、これ以上仕掛ける気はない。
そのまま立ち上がって礼して、籠もりきった熱を抱えたまま更衣室へ。
汗みずくの体操服は下着含めすべて脱ぎ棄てる。
シャワー室、冷水で一気に冷やす。
これが何より涼しく、心地好い瞬間である。
冷たい水に打たれながら志桜里は目を閉じた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年11月26日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年12月03日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年12月03日 11時00分
