【星幽塔】瑠璃色のアクエリアと碧き慟哭｜リアクション

【星幽塔】瑠璃色のアクエリアと碧き慟哭

結：塔癒すための、箱庭を

　――隠し階層・地下倉庫

「へぇ、こんな所があったのね」
「それにしても、意外とごっちゃりしているな」
　地下倉庫を見渡しながら感想を漏らしたアリス・ミーティアと御剣刀は傍らのエリオナイト・ジュノーに案内されていた。
「どうやら、月影塔が出現した際の振動で崩れたみたいで……。過去に塔が損傷した際はここまでひどい事にはなっていなかったのですがね」
　エリオナイトが申し訳なさそうにそういう後ろから、賑やかな声が聞こえた。
「んもぅ！　ラピスちゃんったら闇の病のキレが悪いゾッ♡」
「闇の病とは何ぞや」
　桜庭円がウインク１つしてそういえば、ラピス・ドール・マクレガーが不思議そうに問う。だが、ラピス自身は月影塔の出現により起こった一連の出来事に胸を痛めているからだろう、表情が曇っている。円の言動はそれを察して、ああいう事を言ったのだろう。
「因みに第一層一応見てから、こっちに来たけど……割と皆状況を楽しんでたよ。あれは、見習うべきだね！」
「……そうなのか？」
　ラピスは平静を装うも、その声には不安が混じる。だが、円は穏やかな声色で
「割とね、思ってるよりも皆強いから、そこを信頼しようよ」
　と柔らかな笑顔で言った。ラピスは少しの間考えたが、やがて小さな声で「そうだな……」と頷いていた。少しは明るくなった表情に刀たちも安堵する。
「そういえば、シドニウムはどこだ？　ここにいる筈だが」
　刀があたりを見渡していると……、シドニウムが棚に乗っている道具を整理していた。ただし、顔色は悪く、額には汗がうっすらと滲んでいる。
「大丈夫？　無理は駄目だよ」
「心配かけてすまない。だが、我輩はかに座のアステリズムだ。己の道具ぐらい、探し出さねば……先代たちに顔向けできない」
　アリスが心配して声をかけるも、シドニウムは作業をやめない。時々胃が痛むようだが、それをおして作業を進めているようだった。
「私たちは、シドニウムとエリオナイトさんの探し物を手伝いに来たの。どういうものを探しているのか、大きさとかを教えてもらえる？」
　アリスが問うと、シドニウムは懐から紙と筆をとりだし、ゆっくりと描き始めた。
「こういう物だ。高さは５０ｃｍ程で中が開くようになっている」
　と、見せられた絵は「なんとなくこういう焼き物の花瓶あるよね」といった曖昧で、微妙に気が抜ける絵だった。アリスだけではなく刀と円も目が点になる。その後ろではエリオナイトがおろおろしていた。

　――画伯だこれ（ｂｙ円と刀）

　そう、シドニウムは絵が下手なのである。そして本人はというと……彼らの反応に凹んでいた。ラピスも何も言えなくなり、とりあえずぽん、と肩に手を置く。
「なんというか……個性的じゃな」
「……そうか。やはり変なのか。私の中ではなかなかの出来だと思うのだが……」
「シドニウムさん、そう気を落とさずに」
　刀がそういって励ます横で、エリオナイトはさっさか絵を描いた。それはぱっ、とみた感じでは星幽塔のミニチュアで、中を開くと各階層の様子が見える者なのだそうな。それを見、ラピスが少し懐かしそうに目を細める。
（？　なんか関係があるのかな）
　刀はラピスの様子がちょっと気になった。
　一方円は倉庫を見渡していた。月影塔が第二階層に突き刺さった振動で倉庫に被害が出たそうだが……。
「うん、シドニウムさんが汚部屋なのは修正だから仕方ないんです！　ボクもそんなもんだから！　誰かに物を動かされると物の場所が解らなくなるから超絶おこだよね！」
おこだよ！　と何かを思い出してふくれっ面する円に、シドニウムはただただ苦笑するしかなかった。
　ちなみにシドニウムの自室がフランチェスカの部屋並みに酷く散らかった状態なのか、はたまたすっきり片付いているのかは未知数だが今はそんなことはどうでもいい。今、大切なのは探し物とこの場の整理整頓である。