――星幽塔・第一階層

　それは、突如として訪れた。
　最初は天から水滴がぽたん、ぽたんと落ちる程度だった。人々は雨だろう、としか思わなかったが、それはやがて音を立てて流れ込んだ。
　水は一昼夜流れ込み、翌日には別世界で『アクアアルタ』と呼ばれる現象もかくやの洪水に見舞われる。
「これは……、もしや……」
「もしかしなくても、月影塔がこの階層の天を突き破ったからじゃろう」
　フランチェスカ・Ｄ・Ｓが息を飲み、ラピス・ドール・マクレガーがぐっ、と歯を食いしばる。
　このままでは、第一階層は水に沈んでしまうのだろうか？　そう思った時、２人の脳裏に浮かんだのはかに座のアステリズムの事だった。

　かに座のアステリズムが持つ固有の能力。
　それは、星幽塔を修復する、というものである。

「かに座のアステリウムの力を借りなければならんようじゃな。……さて、どのように連絡を取るべくか」
「第四階層まで、伝令を走らせるしかないでしょう」
　ラピスとフランチェスカが話し合っていると……、１体のオートマータ（人型のからくり）が訪れる。それが誰のものかわかったフランチェスカはぐっ、と右手を握りしめた。
　オートマータは一礼すると、フランチェスカに１通の手紙を渡す。封を開ければ、それはうお座のアステリズムである少年、アヴィケンナ・マラータからの物だった。
「……やはり、そうなりますよね」
　フランチェスカはため息を１つつくと、ラピスに問いかける。
「今からアステリズムの会議所……『クレイドル』へ向かいます。ラピス様も、ご同行願えますか？」
「わかっておる。説明せねばなるまい」
　２人はオートマータに案内され、城を後にした。

　＊　＊　＊　＊　＊

　その頃、隠し階層内『クレイドル』

　一足先に向かっていたアヴィケンナは、管理人である幽霊のエリオナイト・ジュノーと共に地下倉庫をあさっていた。そして、その先には……塔を修復できるシドニウム・カトルその人がいる。彼の表情は僅かに険しい。どこか痛むのか、時々歯を食いしばっているようにも見えた。
　探しているのは、階層の修復に必要な道具で、星幽塔のミニチュアだった。それは、現物の現状とリンクしている為、本体が壊れたら同じ場所が壊れるそうだ。代々のかに座のアステリズムは、このミニチュアを通じて星の力を使っていた。
「塔の修復は、久方ぶりだ。……儀式の道具がなくなってしまうのもうなずける。例の影によってここが荒らされたとなればなおさらだ」
　シドニウムはそういい、埃にまみれながらミニチュアを探す。その背後で、アヴィケンナが乱暴に頭を掻きながらあたりを見渡した。
「僕のラボもモノがあふれているけれど、ここも大概だよね」
「こちらも復活してからずっと探しているのですが……」
　エリオナイトが深いため息を吐きながらあたりを見渡すが、目的の物が見つからない。エリオナイトはとりあえず休憩しましょう、と２人の為にお茶の準備をするべく地下倉庫を出た。
　シドニウムは頭についた埃を払いながらアヴィケンナに向き直った。
「……冒険者たちにも手伝ってもらえないだろうか？　ここは案外広い……。それに、第二階層の方も気がかりだ。アヴィケンナ殿もそうだろう？」
「確かにね。水位が下がったから、嘗ての建物とか出てきて興味深い」
「我輩も興味深いがそれ以上に第二階層に空いた穴はどうなんだ」
「勿論早く修理したい。けれど、塔を修復するために必要な道具がなきゃ話にならないだろう？」
　アヴィケンナの言葉に、シドニウムも深く頷く。
　そうこうしている内に、エリオナイトが戻ってくる。彼女は２人にフランチェスカとラピスが到着した事を伝えた。

　アヴィケンナとシドニウムは、古のふたご座のアステリウムに驚きつつも、フランチェスカの説明で事情を把握する。
　そして５人は話し合い、冒険者たちに３つの依頼を出すことにした。

　＊　＊　＊　＊　＊

（なんか、騒がしいな）


　アリス・ミーティアは、隠し階層にてアステリズムが冒険者を集めている、と聞きそこを訪れていた。彼女たちの前には、３人のアステリズムと先日の戦いで姿を現したラピス、そして『クレイドル』の管理人であるエリオナイトが並んでいる。
「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。今回、月影塔の出現により第一階層の天上部が破損、第二階層の水が流れ込むという事態に至りました」
　フランチェスカが現状を話し、その流れで冒険者たちを見る。アリスは妙にわくわくするような気持ちになり、その言葉を待つ。
「今回は、皆さんに３つの依頼をします。その中から１つを選んで活動してください」
　フランチェスカが提示したのは、次の内容だった。

　　１つ目：隠し階層の地下倉庫でシドニウムの探し物を手伝う。

　　２つ目：第二階層の被害を点検する（ついでに姿を現した遺跡もちょっと調査する）。

　　３つ目：第一階層の現状を回復するために力を貸す。

（どれも、重要な事なのね）
　アリスが真面目な顔で頷いていると、アヴィケンナがいつにもまして真面目な顔で口を開く。
「確かに、第一階層の戦いがいかに大変だったかとか、話に聞いてはいる。今回はその後始末的なことかもしれない。それでも、第二階層、第一階層の双方のピンチなんだ。手を貸して欲しい」
「おそらく今後も月影塔は伸びるだろう。そのたびに修理が必要になる。今後の対策のためにも、頼みたい」
　シドニウムもまた真剣なまなざしで言い、全員で頭を下げる。現役アステリズムだけではなく、古のアステリズムであるラピスと過去を知るエリオナイトも頭を下げているのだ。断るわけにはいかない。
「さて、どうしようかな」
　アリスは思案顔で内容を振り返った。


　果たして、塔の傷は修理できるのだろうか？
　第二階層と、第一階層はどうなるのだろうか？

担当ゲームマスター

菊華 伴

マスターコメント

サンプルアクション（1）

プレイヤーの目的・意図

水ではしゃぐPCが見たい

キャラクターの目的・理由

わーい、故郷みたーい！

キャラクターの行動・手段

選択肢：１

ここにきてどれだけたったかはわからないけど、この光景……！
まるで故郷そっくりね！
（足元の水をぱちゃぱちゃ）

こうなったら泳ぐしかない。
およぐわよ！！

……っておもったけどよくみたら天から水？
第二階層から漏れてるって事？
月影塔が刺さってるから？

まずいんじゃないの？
でも楽しんじゃうけど。今のうち今のうち。
とりあえず濡れちゃダメなのを運んで、魔風の光で風を起こして乾かしちゃう？

サンプルアクション（2）

プレイヤーの目的・意図

こっそり懐をを温めようとして、阻止される。
そんなPCがみたいな！

キャラクターの目的・理由

イエーイ、宝探しー！

キャラクターの行動・手段

選択肢：２
GA【ここほれ】

第二階層の水が抜け、遺跡出現？
これは潜るしかないっしょ？

という訳で友達と一緒に潜る！
最初の目的は、第二階層に空いた穴の点検？　わかったわかった！
それがすんだらアヴィケンナに許可もらって遺跡を探検だ。
お宝を手にして売りさばく。

アヴィケンナには悪いが渡さない。
（と言っていますが根はお人よしなので最後にはしぶしぶ渡します）

サンプルアクション（3）

プレイヤーの目的・意図

ただ単に倉庫整理が目的です。
仕事が抜けない我がPC.

キャラクターの目的・理由

とりあえず仕事、仕事

キャラクターの行動・手段

選択肢：３
チャオ！　チャオ！　しーごっとがっすっき～♪
いや、この倉庫見ていたら掃除したくなって。
そのついでに道具が見つかればよし。

名前を確認して、表とか作って、ついでに地図とか作って。
倉庫を見やすくしちゃおう。
よし、がんばれ私。
だれか手伝ってくれると、なおよし。