ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　会議が終わった後、猫屋敷は自宅へ戻ると多くの猫たちが彼を出迎えてくれた。
　猫屋敷家の邸宅は、代々、猫の寄合処である旧市街に居を構えている。
　ゆえに自然と自宅には猫が集まりやすい。
「さて……」
　縁側に出た猫屋敷翁。
　彼はもれいびである。
　そのろっこんは『心行遊楽猫語』といい、猫との会話を望むと実際にネコ科の動物と意思疎通が可能になるのだ。
「さて今日も食べ物をくれくつろがさせてくれとお集まりの近所の猫。野良猫からどこぞの飼い猫まで新入りからボスまでの皆々様にお願いがあるのじゃが」
　その口調は芸達者な落語家か、はたまた詩吟の名手か。
　独特の語り口は、集まる猫たちの耳・視線・顔・四肢を一挙に猫屋敷へ向けさせる。
「実は、このようなチラシを受け取ったので参加してもらいたいのよ。健康診断や予防接種をしてもらえる。しかもタダで。親戚に風邪をひきやすいコ、病気で亡くなったコがおらんかね？　そういう病気を事前に防いでくれようと役場が病院とかけあってくれてねえ」
『そいつはありがてぇありがてぇ！　でも、注射って痛てぇんだろ？』
　ブチ猫の若大将猫が尋ねてきた。
　これに猫屋敷は優しい口調で答える。
「注射怖いコもおるじゃろうが、大丈夫。相手はプロじゃから痛みなど感じる前に終わっちまうさ。だから、できるだけ誘って参加してもらいたいのよ。自然の摂理もあろうが、長生きはしたいものじゃろ？」
『おいらの母ちゃん、病気なんだ！　人間が治してくれるのか？』
「そうとも。きっとよくなる。勿論、こちらがお願いするだけでは引き合わんよなぁ」
　袖の下から取り出したるは、高級猫缶！
　猫に猫缶、つまり賄賂！
「勿論、全員の分を用意してあるぞ？」
『爺さん、アンタ分かってるねぇ！』
　メスの白猫が我先にと封を開けた缶詰の中身に顔を突っ込ませる。
　そのあとを、我が先にと押し寄せる猫たち！
「待て待て！　会場に来てくれたコには詫びにとっておきのおやつを提供しようと思うのじゃがな？　わし、当日お手伝いじゃし」
『お前ら！　当日は爺さんと一緒に行くぞ！』
『にゃああああん！』
　こうして猫屋敷の交渉術は見事に成功。
　イベント当日、たくさんの猫を引き連れて会場入りし、スタッフの三折部が仰天する様を見て、猫屋敷は愉快そうに微笑むこととなる。

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