【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　有沢茉奈がテントの中に踏み込んだ。不機嫌な顔を隠そうともしない。
「オヤジ、ジュースくれ」
「え、一応、銘柄当てのクイズ形式なので」
「参加するわ。桜も参加ね」
　後からきた水上桜に親指を立てて見せる。
「私は観客でいいよ。茉奈ちゃんを応援して」
「必要ない！　二人で荒稼ぎする約束じゃない！」
　大きな声で茉奈が言った。
「してない、してないって、そんな約束」
　桜は激しい動揺を見せる。茉奈に腕を掴まれてズルズルと引っ張られ、強引にイスに座らされた。
「オヤジ、ジュースくれ」
「……クイズ、銘柄当てクイズだよ、茉奈ちゃん」
　桜は焦った表情で耳打ちする。
「か、可愛いお嬢さんの熱望もあって、人数は集まっていませんが、その、クイズを始めたいと思います」
「よ、太っ腹！」
「ま、茉奈ちゃん」
　桜は泣きそうな表情で笑った。
　一問目の問題となる紙コップがテーブルに置かれた。店主が始まりを告げる前に茉奈は飲み干した。
「うめぇー。生き返るわ」
　店主は呆然となった。気を取り直して笑顔を作る。
「あのー、問題に答えます？」
「もちろん！　こんなの簡単よ。このシュワシュワ感、スコーヌだよね！」
　店主は気まずい様子で新たに紙コップを用意した。
「ど、どうぞ」
「おかわりね。オヤジ、気が利くじゃん」
「それ、たぶん、違うよ？」
　桜は店主の顔を見て言った。茉奈は聞く耳を持たず、一気に飲んだ。
「なんじゃこりゃああああ！？」
「え、えええ！」
　豹変した茉奈に桜が驚きの声を上げた。
　喉を掻き毟るようにして茉奈は飛び出した。
「ええええー！」
　驚きの声を上げて桜も後に続いた。