【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　軽やかな足取りで真境名アリサが寝子ヶ浜海岸にやってきた。
「結構、いるわね」
　防風林を越えて斜面を下りる。長い髪をなびかせて砂浜を歩いた。
　――勤めているガールズバーの制服が水着だから見慣れているのよね。それでも海開きはやっぱり特別な日だよね。
　長い髪を弾ませて海の家に直行した。空いている更衣室を借りて肩に掛けていたトートバッグを開く。中を見て、ほー、と声を漏らした。
　取り上げた水着は黄色であった。細長いリボンが絡まったような状態で収まっていた。
　――水着が多くて迷ったから、目を閉じて適当に選んだのよねぇ。
　アリサは艶然と笑った。
　着ていた服を脱いで少し苦労をしながら水着姿となった。
　更衣室を出た瞬間から注目を浴びた。コインロッカーに立ち寄って颯爽と外に出た。
　遠慮のないどよめきが起こる。性別に関係なく、人々の目を集めた。
　――やっぱり、こうなるのね。
　心の中で思いながらアリサは堂々と砂浜を歩いた。時に挑発するような眼差しで髪を掻き上げた。

　首を回った細い布は豊満な胸の先端を辛うじて隠し、鋭角なハイレグを作り出す。背中は大きく開き、スタイルの良さを強調した。
　――あたしが見世物みたいになっているね。
　纏わり付く視線に嫌気が差したのか。アリサは足を速めて海へと入った。少し身震いをした。
「意外と冷たいわ」
　身体を海水の温度に慣らしたあと、緩やかに海底を蹴った。時間の進み方が緩やかに思えるくらいの速度で泳いだ。
　――故郷の沖縄の海とは違う、気持ち良さがあるわ。
　クロールから平泳ぎに変わった。次に背泳ぎとなって青い空を見詰めて過ごす。
「吸い込まれそう……」
　波音に耳を澄ますかのように目を閉じた。
　心地よい時間に心から浸り、アリサは戻ってきた。海水を吸った長い髪を軽く絞って後ろに払う。青い瞳に好奇心の光を宿して歩き出した。