【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　猫耳付きの浮き輪を片手に持ち、曖浜瑠樹が海から上がってきた。元気に砂浜を歩く。
　自然に目が横手に向いた。マンボウくんが若い女性と話をしていた。
「エノコロ岬の灯台は海沿いの道の最初のカーブのところだよぉ。小さいけど道があるから行けばすぐにわかるよぉ」
　間延びした声で道案内に励む。
「わかったわ。ありがとう」
　女性はにこやかに歩き出す。入れ代わるようにして瑠樹が声を掛けた。
「マンボウくん、こんにちはぁ！」
「あ、うん。こんにちはぁ」
「オレ、お昼ご飯にしようと思ってるんだけど、オススメの店とかあるかなぁ」
「あるよぉ。海の家としては小さいんだけどぉ、愛らしい店員さんがいてパペットで楽しませてくれるんだよぉ」
　マンボウくんは手の代わりに顔を向けた。
「わかったぁ。行ってみるよぉ。ありがとなー」
　瑠樹は手を振って駆け出した。真っ直ぐには向かわずに貴重品を預けていたところに立ち寄った。
　財布を手にして小ぢんまりとした海の家に入る。涼しげな水着姿の恵御納夏朝が現れた。左手には猫のパペットを嵌めていた。
「いらっしゃいませにゃ～。お席まで案内するにゃ！」
「おー、よろしくなんだなぁ」
　夏朝は瑠樹の手を引いてテーブル席に連れていく。姉弟のような微笑ましい姿に客は大いに和んだ。
　案内された先で瑠樹は元気な声でカレーライスを注文するのだった。