ドリーム・ゲーム｜リアクション

ドリーム・ゲーム

「要は見せる相手が神様というだけでやる事はゲーム実況ですよね」

　頷いて一人納得するのは檜扇舞華。
　これから先の未来に登場するであろうバーチャルリアリティなゲーム。その中で舞華が選択したゲームはゾンビマーチだ。
　メイド服姿で銃を構えるその姿はどこか様になっている。

「どうやら転送が終わったみたいですね。それではやっていきたいと思います！」

　見ているであろう神様に挨拶をするようにそういう舞華。気分は完全にゲーム実況者のようだ。
　舞華が周囲を見ればそこは様々なものが荒れ果てた街中だ。

「どうやらステージは荒れた街中って感じですかね？　戦う前にまずは地形を把握しましょう」

　言ってから警戒しつつ周囲を探索する舞華。どういった物があるのかも確認を忘れない。

「その辺にある物は逃げるのに使えます。ギミックとしての攻撃もできそう？　高台や高いところがあれば積極的に利用しましょう」

　そうしていると呻き声と共にゾンビが登場してきた。その進行速度はそう早くはなく、どうやら昨今割と見かける走るタイプではないらしいと舞華は安堵する。

「さぁ、撃っていきますよー！」

　まずは近い順にゾンビをその場で撃ち抜いていく。真っすぐ舞華を目指している為にヘッドショットを行うのはそう難しくはないようで、正確に撃ち抜いて行く。

「適度なところでリロードしつつ高いところを目指して移動しましょう！　こういうゲームの場合、あまり足を止めない事とリロード中は絶対に移動するという事を注意しておけば大分違う筈です！　後は画面があるゲームではないので一方に集中し過ぎない事！　色んなところから敵が出てくる可能性がありますからね！」

　舞華の実況の通りに前方だけでなく横手からもゾンビが現れ出す。しかし、それをきちんと把握している舞華はそのゾンビ達にも対応できる少し高いところへと移動する。

「上から撃ち放題だ！　無限弾薬万歳！　え、卑怯？　そんな言葉はこんないたいけな美少女1人を集団で襲いかかってくるあちらに言ってください！」

　ゾンビに言っても恐らく無駄ではないだろうか。
　だが、こういったゲームに関してはリスク管理こそが一番の重要なポイントとなる。優先して倒すべき敵、自らの立ち位置、リロードのタイミングとその最中の行動。
　それらに置いて舞華はとても優れていると言えた。

「おっ。ロープがありますね。これは役立つかもしれませんので持っていきましょう」

　それでいて、こういった視野も広い。卒がないとはこの事であろう。

「あたしは狙えるのでずっとヘッドショットでやってますが、ここまでリアリティのあるゲームだと恐らく足を狙うのも有効だと思います」

　言うだけでなく即座に実戦をして見せる舞華。その狙い通りに一番近くにいたゾンビの足がすね辺りから弾け飛ぶ。

「見ての通り、這って動くことはできるでしょうが機動力は落ちるので安全を確保した上で撃つことができます。後は狙いに不安があれば胴体を撃つのが良いのですが、ヘッドショットに比べて多分弾数がかかる筈」

　今度は別のゾンビに対して胴体へと弾を撃ち込む。その言葉通り、二回程射撃をしなければゾンビは倒れなかった。

「まぁ、実際のゾンビなら二発どころじゃないと思いますがそれは兎も角。倍かかるので狙い易くても処理時間がかかるようになってしまうのが難点ですね」

　その後も、様々な説明実況を交えてプレイしていく舞華。
　それはボス戦でもまた同様であった。

「なるほど。ちょっと図体が大きいんですねー。これなら天井が低かったり色々な物がある場所に誘い込むのが有効、かな」

　地形や障害物を利用して、ボスゾンビの動きを阻害しつつヘッドショットを只管狙うメイド。何とも言えない光景だ。

「はい、クリアーです。ご覧頂きありがとうございました。……これ、マシンガンとかロケランとかないのですかね？　それでプレイしてみたいのですけどー」

　最後まで物騒なメイドさんである。

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