ワールドツアー＜オーストラリア編＞｜リアクション

ワールドツアー＜オーストラリア編＞

☆ケアンズとグリーン島

　八神修は駅らしい周囲の様子に、慌てず英語で町の人に話しかけました。
「成程、ケアンズか」
　財布を確認すればカードもあります。
（空港もあるし、滞在は問題無い）
　そう思った修の耳に、聞き覚えのある日本語が飛び込んできました。
「すみません、ここはどこなんですか？」
「あおい！」
　見れば駅員に話しかけているツインテールの少女は、七夜あおいでした。
「ケアンズ駅ですよ」
　どう見ても外人な駅員も、日本語を話しているではありませんか。
「日本語通じるのか……流石神魂」
　苦笑しながら修はあおいの元へ急ぎました。
「修くん！　よかった、安心した……」
　見るからにほっとした様子のあおいを見て、くすぐったい気持ちになる修でした。
「知ってる人に会えてよかった！　修くんが一緒なら大丈夫だね」
「俺だって嬉しいよ」
　修はこの不思議に心から感謝しました。
　
「ネイチャーパークに行こうか。熱帯雨林探検と動物たちとのふれあいが同時に体験できる」
「すごいね。楽しみだなあ」
　観光案内所でガイドブックを手に入れ、修とあおいはキュランダからシャトルバスに乗り込みました。
「あおいの御目当ては？」　
「うん、オーストラリアだし、コアラが見たいな」
「俺もコアラかな。写真も撮ろう」
　バスを降りた二人を待っていた動物たちはワニ、ウォンバット、ディンゴ、ヘビ、トカゲ、カソワリ……
　そしてもちろんコアラです。
「かわいいね」
「あおい、爪に注意だよ」　
　コアラを受け取るあおいに修は素早く注意し、スマホで写真を撮ります。
「さらふわというよりもこもこだね」
　修も、優しく静かにコアラを抱っこするのでした。
　
　その後は熱帯雨林ツアーでクルーズで自然を満喫します。
「宿はグリーン島でいいかな。案内したい所があるんだ」
「私はよくわからないから修くんに任せるよ」
「それじゃ、予約しておくよ」
　シングルルーム２つの電話予約を済ませた修に、あおいが言います。
「すごいね、ツアコンみたい」
「いやあ」
　照れを顔に出さないようにしようとする修でした。

　ケアンズから船でグリーン島へ。
「ここはグレートバリアリーフの玄関口で、珊瑚でできている島なんだ」
「さすが詳しいね、修くん」
　海岸に座り、夕日を２人で眺めます。
「ケアンズだと海に沈む夕日が観れないけど、ここなら、ほら……」
　美しい空は燃え立つ緋色。
　世界遺産の海に沈み往く夕日。
（美しすぎて、雄大すぎて、敬虔な気持ちになる）
　これは多分、原始から人が持つ自然への畏れだ、と修は思います。
　そんな瞬間を大好きな人と共有できるのはなんと幸せなことでしょうか。
「……すごい」
　そうつぶやいたあおいと目が合ったとき、想いが伝わりあった気がしました。
（南半球の星達が少しずつ、俺達に会いにくる……）
　いつしか夕陽は沈み、満天の星が広がっているのでした。
　