ワールドツアー＜オーストラリア編＞｜リアクション

ワールドツアー＜オーストラリア編＞

☆パワーハウス博物館とコアラサンクチュアリ

　笛の音を聞き、観光案内所を見て……
　御巫時子は辺りを見回しました。
「気付いたら外国みたいです。ここはもしかしてオーストラリア？」
　ＴＶか写真で見たような景色でした。
（本で見たことがありますが来たのは初めてです。これは神魂の影響でしょうか？）
　耳をすませば鳥の声や……普通に日本語が聞こえてきました。
「日本語で通じるみたい？」
　少し安心して、時子は鳥たちを観察し始めました。
（珍しい野鳥が多いと聞いてます。あれはワライカワセミさんですね。あちらはインドハッカさんですし、初めてお会いします）
　時子はろっこん『鳥の囀り』で鳥さんとお話してみることにしました。
「はじめまして……。御巫時子と申します……」
『おや、あんた私たちの言葉がわかるの？』
「はい。ここはオーストラリアですよね？　このあたりのおススメはどこでしょうか？」
「そうだねえ、シドニーはいろいろあるよ。ちょっと遠いが動物園もある。人間はコアラが好きで抱っこしに行くみたいだね。鳴きも飛びもしないのにどこがいいのかねえ？」
　気が知れない、という様子のインドハッカに、時子はちょっと笑ってしまいました。
「コアラさん可愛いですね。でもインドハッカさんたちも可愛いですよ」

　ふと、視界の端に入った人の姿に、時子の胸は高鳴りました。
「尚輝先生！」
　大好きな五十嵐尚輝先生が、きょろきょろとあたりを見回していたのです。
「御巫さん」
「先生、ご一緒してもよろしいですか……？」
「ええ。しかしここはどこでしょうね？」
　いつものように頼りなげな五十嵐ですが、時子はとても安心感を感じていました。
「オーストラリアですよ。尚輝先生はオーストラリアに行かれたことはありますか？」
　笑顔で問いかける時子に、
「ありませんね。僕は旅行より研究のほうが好きなので……」
　と返事が返ってきました。
　尚輝先生らしい、と頷く時子でした。
「尚輝先生、パワーハウス博物館に行ってみましょう。先生も気に入ると思います」
　五十嵐は財布を確認し、頷きました。
「行ってみましょう」
　赤レンガの建物に入ると、様々なオブジェが並んでいました。
「プラズマボール……綺麗ですが触るのは少し怖いですね。大丈夫なのは分かってますが……」
　透明な大きな球体の中に、稲光のような青い光があります。
「ふむ、それじゃ僕から」
　科学となるとためらいのない五十嵐です。
「ほら、大丈夫」
　五十嵐の手に合わせて光は動き、緑に色を変えます。
「そうですね」
　楽しそうな尚輝先生の様子を、時子はうっとり眺めていました。
「蒸気機関車が展示されてますね。実物ですよね……圧巻ですね」
　他にも様々な展示があり。
「これはスペースシャトルですね」
　二人はスペースシャトルの中に入ってみるのでした。

　博物館を出た二人は、ローンパインコアラサンクチュアリに向かいました。
「コアラさんを抱っこしてみたいです。ぜひ尚輝先生も一緒に」
「コアラですか……なんとなく他人の気がしませんね」
「コアラさん、寝てますね。あっちのは歩いてる」
　間近で見れてほっこりする時子です。
「カンガルーさんに餌をあげたいです」
　売店で売られていた餌を買ってカンガルーの元へ向かうと、カンガルーがわらわらと集まってきました。
　先生と一緒に餌をやりながら、時子は微笑みます。
「楽しいですね」
「あっちの鳥にも餌付けできるようですよ」　
　先生が指差すほうを見ると、鮮やかな色の鳥たちが餌をもらっていました。
「ゴシキセイガイインコですね。それじゃ、この後行きましょう」
　先生は鳥好きの時子のために教えてくれたのでしょうか。
　それはとても幸せな時間でした。

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