水際の攻防｜リアクション

水際の攻防

【水際からの帰還】

　
『――ていうかさ、人魚クン達、ちゃんと帰り道わかってる？』

　人魚達との戦いの後、円は、すごすごと引き返す彼らに、ふと気になってそう問いかけたらしい。
「と言うのも、言っちゃなんだけど、人魚って本来ならわりとレアというか、良くない人達に命を狙われそうな気がしたんだよね」
　と、円は人魚達に声をかけた理由を、刀やほかのワニ退治に参加したメンバーに端的に説明した。
「だよねー。俺も、人魚って本当にいるんだーってちょっと感動したもん」
　と、それに幽も同意したように頷く。
『二十四時間、密着取材とかされたら大変そう』
　海も、人魚がどれぐらいテレビのネタになるかを、よくわかっているらしい。
「乙女ゲーだと、ちゃんとフラグ立ててたら人間として暮らせそうだけど。まあ、リアルじゃなかなかそうはいかないよね」
　碧南は、本気か冗談なのか判断のつかない顔で、そんなことを言う。

『情け容赦なく鉄パイプで殴打してくるわりに、妙な気遣いをする連中だな』

　人魚達は不思議そうにそう言いつつ、こう続けたらしい。

『心配は無用だ。我らには帰るべき場所も、そのための道しるべもある』

「――まあ、嘘は言ってなかったっぽいし、それでボクも『じゃあ気をつけて帰りなよ』ってそのまま見送ったわけさ」
　円は、事件の顛末に関する説明をそんな言葉で締めくくった。
「……なるほど。それなら、あのワニも、同じように帰る場所を知っている可能性が高いということか」
　修が顎に手を添えながら言えば、
「そういうこと。だから、今回の事件は一件落着ってことでいいんじゃないかな？」
　と、円が一同を見渡し、話をまとめるように言った。
「……そうか。なら、よかった」
「ええ。あのままこちらで寂しく死んだりしたら、後味が悪いものね」
　刀と朝衣が、ほっと安堵の息を吐くようにして答える。
「なかなか貴重な体験だったしな。あんなワニと戦う機会、映画の中でもなけりゃそうそうない」
　と、飛龍も口の端を吊り上げる。
「ああ。強いていうなら、あのワニの肉をちょいと食ってみたかったが……まあ、帰りに鶏肉でも買って帰って我慢するとするか」
　鴻が、オチをつけるように言えば、自然と一同に笑みがこぼれた。
　と、そのとき。
「――ふうん。こっちにさわぎは無事に解決したのね」
　温泉で汗を流し、念のために海に様子見にきた莉鳥が一同の様子を見渡すようにして言った。
　その口調は、いつものように相変わらずクールであったのだが。

「……いやいや。それより、服が穴だらけなんだけど、だいじょぶ？」
「……！？」　

　円の至極真っ当な突っ込みに、莉鳥は少しだけ目を見開いた。
　そして、

「……これは、そう、ファッションよ」

　と、かなり苦しい言い訳をして、ふいと目を逸らしたのだった。

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あとがき

担当マスター：水月鏡花
ファンレターはマスターページから！

というわけで、ご参加頂いた皆様お疲れ様でした。ＭＳの水月です。

そんな感じで、今回は水際のバトルシナリオを書かせて頂きました。

寝子島は相変わらずフツウが危険で危ない感じですが、今回も皆さんの活躍で、どうにかフツウを守られたようです。ありがとうございました。

しかし、やはりバトルシナリオは書いていて楽しいです。ときどきもっとこうド派手なバトルとか書きたくなります。「らっ！」のサードシーズンは「らっかみゼット！」というタイトルで、宇宙を舞台にもっと色々インフレしてほしいです。ヒロインはもちろん「スーパーののこ」で。駄目ですか。そうですか。

ともあれ、お読みいただいた皆さんに、少しでも楽しい時間を過ごして頂けましたなら、これに勝る喜びはありません。

それでは最後になりましたが、ご参加頂いた方、ここまでお読み頂いた方、そして「らっかみ！」に関わる全ての方々に感謝を。
ではでは、またどこかのあとがきでお会いできることを祈って。

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