私立探偵の隠し場所｜リアクション

私立探偵の隠し場所

「うわぁ……いい天気デス……！！」
　少女がひとり、寝子島駅の改札から島の様子を眺めていた。
「ホントウに、ネコがイッパイデス。聞いていたトオリ……！！」
　猫がそこかしこにいることに感激している。この島を訪れたのは初めてのようだ。
　周囲をキョロキョロ見渡したその少女は、すぐに近くにいた女性に話しかけるため足を早める。あちこち見て回るのも楽しそうだが、遊びに来たのではないのだ――手早く行動しなくては。
「スミマセン、ちょっとイイデスカー？」
　聞き取ることはできるが、どことなくたどたどしい日本語。肌の色は病的なほどに白い。長い黒髪とのコントラストが鮮烈だが、その琥珀色の瞳を見ても日本人ではないことが容易に予想される。
　彼女は人を探しに来たのだ。そして、その人物が住む寝子島を見に来たのだ。その時間は７２時間。少なくはないが、充分とは言えない時間。
「はい、なんでしょう？」
　振り向いた女性は、屋敷野梢。年のころ８～９歳ぐらいの少女に話しかけられて邪険にするような性格ではない、にこやかな笑顔で応対してくれた。
「人をサガシテるんです、パパのハズの人で……アマリモノノのヒートっていうシリツタンテイらしいのです」
「……あら。ちょっと待ってくださいねー……あなた、お名前は？」
　梢は手元の携帯電話を操作しながら少女に名を聞いた。
「ハイ、私フィリアといいマス！」
　少女は片手を高く上げて快活に応えた。梢はどこかに電話をかけながら、静かに応対する。
「天利さん……ええ……女の子が……フィリアさん……ええ……ええ……そうなんですか」
　ややあって、電話をかけ終えた梢はしゃがみ込み、フィリアと視線を合わせてそっと告げた。
「フィリアさん……あの……驚かないで聞いてくださいね」
「……ハイ」

「その人は……ぎっくり腰で死んだそうです」

「ぎっくり腰デ！？」

「本人がそう言っているので間違いありません」

「生きてるジャン！！！」

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