【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆｜リアクション

【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆

「おや。言われない？」
「んー……違うニュアンスでなら言われなくも無いですが」

　こちら、何やら魅惑ボイスが響き渡っている。
　片やどんなトーンになっても甘さ纏う魅了系、片や真摯さの中に大人の色香漂うハスキー系。
　互いの声質を、素敵ですね、と褒め合ったり分析したりしているのはマリエッタ・ラシュリエと黒崎俊介である。
　ざっくりした自己紹介も済ませていれば、歩く速度に合わせたのんびりした会話が続いていた。

「マリエッタさんは日本語がとても綺麗で流暢だね」
「１０歳の時から日本に住んでるので。今は大学院で建築学を専攻しています」
「目標ももって取り組んでいるんだね」
「そう見えますか？」
「見えるさ。真っ直ぐ前を見ている、強い瞳をしているからね」

　話していれば、『ああこういう人ね』と俊介の人柄が分かれば、特に気にしないマリエッタ。
　社交辞令に聞こえず素直に紡いでくれているのも伝わる為、ややこそばゆくもある。

「あ。そうだ、すいませんが私の事を一枚撮ってもらえませんか？」
「構わないよ。誰かに見せるのかな？」
「ええ、ＡＩを研究している彼がアメリカに留学中なので……たまにはこういう姿の写真くらいと思って」
「つまり理系カップルさんだね」

　快くマリエッタのスマホを拝借した俊介から、撮るよ、の合図でニコリと控えめに微笑んだ。

「どうかな……これで大丈夫そうかい？　一応浴衣の柄も入るようにしたのだけど」
「ええと、ハイ。よく撮れてます。ありがとうございます」

　あとで彼氏にメールで送ろう。
　年上の男性に撮ってもらった、ということは伏せておいた方がいいかしら……なんて思案しながら
　互いの気さくさも相まって、とても楽しく散策を満喫するのだった。