【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆｜リアクション

【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆

　祭り行こうZE！
　そんなシンプルイズベストな、生徒会長兼いち高校三年生たる志波武道の呼びかけに、時間と都合とタイミングがあった同学年の面々が招集時間よりちょっぴり遅れて、待ち合わせ場所にて顔を合わせる。

「おせーぞ言い出しっぺ」
「いやぁ、せっかく高校生活最後の年だしこうして集まるのも素敵かなっておもったんだけど、
　意外と浴衣に手間取っちゃったテヘ☆」
「ご一緒させてもらえて嬉しいです～」

　待ち合わせ時間５分前に到着していた高梨煉、『なぜだれもいないんだ』な表情で待っていれば現れ始めた顔たち、とりわけ声掛け主には第一声送りたくなって当然である。
　武道の後ろからのほほんと後に続くように来た倉前七瀬は、『つい本に夢中だったとです』と素直にお辞儀。
　更にその一番後ろからのんびり歩いて来た桐野正也に至っては、遅れた自覚すらないようだ。

「やっぱ浴衣率高いなー俺も浴衣にすれば良かったか？　って前に浴衣がないか」
　周囲を見れば、あれ？　俺だけ私服？？　と首を傾げていたり。

「フハハハ！　去年金欠だった俺とはオサラバ！　いや余裕あるわけでもないけども！
　今年は絶対着てやろうって思ってたんだぜい！」
「そーいやそんな事言ってたな去年は」
「よく似合っとるとですよ～」

「ありがとう七瀬くん！　これ、柄一目ぼれした浴衣！　時計草だぜぃ」

「５割増しで男前になったんじゃないか」

「れんちゃんっ、それ浴衣効果絶大なの喜んでいいの俺！？　ってことは普段は！？」
「え？　普段男前のつもりだったの？　ブドー」
「なにか言った？　仲間ハズレなきりのん☆」
「Σ ひでぇ！？　みんな着てくるなら教えとけよ！？」
「決して示し合わせたわけじゃないけどな」

「そうですねぇ。浴衣祭り、って聞いたのでなんとなーく僕も着てみただけだったとですが」

「ほら☆　七瀬くんだってきりのんと同じ条件だったYO」
「ち、ちくしょー！！」
「………三年有志でお祭り巡り、のメンバーで合ってるかしら」
「「「うぉビックリした」」」（by. 武道＆正也＆煉）
「あ、三宅さんも参加です？　よろしくお願いします～」

　早くも賑やかな一画を作っていれば、その雰囲気に突如舞い込む清閑な声音。
　寝子高三年生たちに片っ端から声をかけていた生徒会長は、どうやら森の精の召喚に成功していたようである。
　どこからともなく、いつの間にか男４人のすぐ真後ろに立っていたのは、翠を基調としたボタニカルな柄が本人の醸すオーラと相まって、艶やかさ演出する浴衣に身を包んだ三宅葉月だった。
　他３人が驚きのあまり固まったのを他所に、わぁっとても綺麗ですね～なんてマイペース崩れることなくニコニコと伝える七瀬に、表情は揺るがないものの、高貴な森の精霊然とした葉月がお礼を示すように微かに顔を傾ける。
　日頃、別世界の住人思わせる長いウェーブの艶髪が今日は浴衣仕様でアップにされていれば、傾いだ瞬間サラリとサイドに垂らした一房がなびいた。

「三宅さん、浴衣は自分で着たとですか？」
「ええ……生地を選んで仕立てたのも、私」
「わぁ、それはすごか～。女の子の浴衣は、男より大変そうですー」
「だから早めに着付けして……１５分前に着いたのだけど。誰もいなかったから、少し歩いていたわ」
「「「「すみませんでしたぁ！」」」」

　今度は武道と正也と七瀬、つられるように煉も一緒に。女子を待たせた男たち、一斉に葉月へと身体を折った。