【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆｜リアクション

【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆

　長身なアッシュブロンド、その横に並ぶ金の糸から覗くアメジスト。
　そんな二人が、色違いで揃いの葡萄柄な浴衣姿にて屋台を歩く様は、どう考えても人目を惹くというもの。
　集まる視線も想定内というふうに、屋台にて平然と食べ物購入するヴェルト・レトランジェの手元を、少し不思議そうにメーベル・コルテージュは見つめた。

「先日の祭りでも拝見しましたが……寝子島の屋台は、目新しいものばかりでとても興味深いですね」

「これなんて、真っ白でふわふわしてまるで雲のようだな。しかし君、そんな格好で暑くはないのかい？」
「お気遣いは結構です、露出が多い方が落ち着かないもので」
「それにしたって厳重すぎるのではないかと思うのだが」

　浴衣の上に草木色のストールのような物を巻き、両手にはきっちり執事グローブ。
　見ているだけで眉が寄りそうになるヴェルトへ、涼しい顔でメーベルは返す。
　その表情を崩したくなれば、ヴェルトは持っていた綿飴をズイッと彼の目の前へ差し出した。
　その一見可愛らしくすら見える口元が、あーん、と言っているのが見えれば緑玉の瞳はやや遠い目に。

「ほら、早く食べるんだ」
「いえ、俺は大丈夫ですので……」
「いらないのかね？　風邪を引いた時は喜んで食べてくれたじゃないか」
「……あまり揶揄わないで下さいな、先生」
「生き甲斐の一つだからいい加減諦め給え」

　明らかに戸惑っているメーベルを見れば、とても満足そうに微笑んで。仕方がないから勘弁してやろう、と腕が引かれる。
　相も変わらずな先生のペースに振り回されつつも、それすら幸せそうに、小柄な背中の後へしっかりとついて行くメーベルがいた。

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「色んな屋台があるの、ね」

　コロカラと心地よい下駄を鳴らしながら、表情動かさずそう呟く嘉渡洲稀跡の手には、たこ焼き、綿飴、手作りキャンディ（猫）が器用に持たれている。
　表情からは窺い知れないが、これでもお祭りの雰囲気をしっかり味わっているのだ。
　現に、白地に水色の百合と小柄な桜が沢山舞う清涼感溢れる柄を、黒灰色の帯で引き締めて水晶の付いた帯留めをチョイス。
　浴衣祭りに則って心から楽しもうという心意気が満ち溢れているのである。
　猫の形にしてもらったキャンディに、瞳を細めながらどこからたべようかしら、なんて思案していればふとその視界に雑貨屋が映った。

「アクセサリー……付いている石は作り物だと思うけど」

　宝石や鉱石に興味を持つ稀跡は、自然と惹かれて寄って行く。
　作り物の石も好きよ。職人さんの想いや技術が詰まっているから。
　脳裏でそう呟きながら、もう目はどれを買おうかと吟味している。

「これを１つください」

　手に取ったのは、ターコイズを思わせる深い蒼の石と小さな色付ガラスで装飾された簪。
　包むのは丁寧に断った後、それを自身のお団子ヘアーへ慎重に刺した。
　どこか満足げな色を頬へ浮かべて、稀跡はまだまだ先を征く。