幻想遊戯～お前もナポリタンにしてやろうか～｜リアクション

幻想遊戯～お前もナポリタンにしてやろうか～

「そろそろ、終わりにしましょう……！！」

　屋敷野梢は叫んだ。
　要塞内部では、ナポリターナ・スパゲッティーノ大総統との戦闘が続いていた。操作盤へ加えられた水の攻撃のおかげで寝子島への脅威であるパスターＸそのものに何らかのダメージを与えられたことは確かだった。
　そして、何やら頭上の方向で大きな物音と振動が発生していることも無視できない。

　蝶と化したまま、やはり蝶に変身させた多くの瓦礫と共に大総統へと突撃する。交戦を続ける大総統の集中力を少しでも削ぐためだ。
『……そこだ！！』
　しかし大総統は左手のライフルを捨て、数多の蝶の中から梢本体を掴んだ。
「うわあっ！？」
　恐るべき戦闘のカンである。恐らくはディテクトマジックで感知することができるもれいびの反応から、梢が変身した蝶を割り出したのであろう。
『ようやく捕まえたぞ……ちょこまかとうるさい蝶め』
　そのまま左手に力を込める大総統。決定的な攻撃力はないものの、その辺りのものを手当たり次第に蝶にしてぶつけてくる梢は無視できない存在だ。早めに潰しておくに限る。

「……なんちゃって」

　だが次の瞬間、梢は人間の姿に戻った。人間に戻ればさすがに一握りで潰されはしない。至近距離まで近づけば剣で攻撃されることもない。大総統の懐にもぐりこんだ今が、最大のチャンスである。
『……おのれ！』
　大総統は梢から距離を取ろうとした。しかし今度は梢がそれを許さない。
「捕まえたのは、こっちのセリフですよー」
『！？』
　見ると、梢の両腕がパスタ化している。それが複雑に大総統の腕に絡みついて離さないのだ。
『貴様……最初から狙って……！！』
「絶対に離しませんよー、これでもくらいなさい！」

　梢はこの時のために温存しておいたスクロールを一気に開放する。使用回数は１３回。その全部をマジックミサイルにして全弾を大総統に叩き込んだ！

『うおおおっ！？』

　胴体に強力な攻撃を受けた大総統はひるんだ。魔術の矢１３本は大総統の身体に大穴を開け、その活動を著しく阻害する。

「今だ！」

　その隙を、御剣刀は見逃さなかった。
『……！！』
　驚くべきことに、大総統はまだ動いていた。右手に握ったパスタードソードは、胴体に風穴を開けられた今でも、必殺の威力を秘めているのだ。
　もちろん、その警戒を怠る刀ではない。
「なら、これでどうだ！」
　ろっこんの進化能力を使い、刀は空中を足場にして宙を蹴った。大総統と梢を中心にして超高速で周囲を移動してかく乱する。

「くらえ、カタナスラッシュ！！」

　大総統の死角から放たれた刀の斬撃が大総統の首を捉えた。勢い余った刀はぐるりと身体ごと一回転して、ぐらりと揺らいだ大総統に向けてもう一撃を見舞う。

「……ダブル！！」

　強力な二段攻撃だった。さすがに１３発ものマジックミサイルを受けた後のこの攻撃に、大総統も為すすべたく倒れる。

　しかし問題はそこではない。
「……あれ、これ……ヤバいんじゃないですかねー……」
　梢が大総統の身体を押し退けながら呟いた。
　問題は、パスターＸの砲台が支柱を失って、さらに２倍の重量をもって土台のパスタ皿部分を押し潰そうとしていることである。天井を破って巨大フォークが落ちてきたことで、ようやくその事実に気付いた。
　大変な轟音である。
　そして、その中には大総統と戦闘を繰り広げていたメンバーほぼ全員がいることが更に問題である。
　ついでに言えば、パスターＸの操作盤は破壊され、寝子島に向けて発射されるハズだったパスタ光線のエネルギーは行き場を失って暴走している。

「……これ……ひょっとして……」
　梢の呟きに、刀が答えた。要塞のあちらこちらから、行き場のないエネルギーが溢れてきているのを感じる。

「爆発オチだな」

　言ってる場合ではなかった、という。

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