屋根模様になにを見るか｜リアクション

屋根模様になにを見るか

　集中し出すと、漫画やゲーム関連以外でも凝り性なのかもしれない。
　二階ベランダから、じ～～～っと、一階の屋根部分にのっかっているゴミを見つめ、白真白は改めてそんな自己分析をぼんやりしてみたり。
　カード類の整理整頓もかねて、部屋やベランダの掃除に精を出している真っ最中である。
　普段から整理はきちんとしている方ではあるが、時折奥底に追いやられてしまった過去のカードやゲーム類を引っ張り出す事もあるので、乱雑にならないようこうして自然と動き出すことたびたび。
　そんな中、ふと視線を下げてみれば見つけたゴミ。
　『放っておく』、そんな選択肢は今の真白には気分的に論外であった。

「取らないとね」

　そう呟くのをきっかけに、早速ベランダを乗り越えてストンッと一階屋根へと降り立った。
　――　そういえば屋根の上に出たことってなかったなぁ。
　なんて、思い至れば片手に持っていた掃除道具を一旦置いて、改めてその場で周囲をぐるりと見渡してみる。
　ずっと見慣れていると思っていた景色が、普段と違うものに変化して真白の色違いの瞳へ映り込む。
　そっか死角なんだ。
　今見ている方角は、二階からは壁側になっていて、部屋の中からでは見えない風景なのだと思い至った。

「うん、こういうのもたまにはいいかも。風も涼しいし」

　初めてみる景色。
　もしかして、まだあったり……？
　ふとしたそんな思いから、真白の視界が上空へと移動する。
　まさか今更にして自分の家でこんなワクワクとした冒険心を抱くなんて。しかし折角抱いたからには、挑まなければもったいない。
　真白、階下の物置の中に脚立の存在を思い起こせば、いそいそと次の行動へと移った。

　二階のベランダに脚立を設置出来た時には、やや真白の息は切れていたり。

「さ、さすがにここまで脚立を持ってくるのは疲れるぅ……」

　自身の身長とほぼ同じかちょっと大きめの脚立を、担いで上がってくれば呼吸も乱れるというもの。
　深呼吸を何度か繰り返し落ち着いてから、よしっ、と気合を入れ直し脚立の階段へ一歩を踏み出す。

「さぁ、いざ行かん新天地へ」

　冒険者のそれな台詞を意気揚々と放ち、順調に高度を上げていく。
　そうして訪れるは、本日の頑張りが報われた瞬間。
　初の二階屋根へと登り切って、真白が立ち上がった先には期待通りにまた初めての景色が広がっていた。

「お～いい眺めだ～」

　ここだから感じられるであろう風に、目にかかりそうになる髪を手で押さえながらも気持ちよさそうに吐息が漏れた。
　周囲の家々も同じような高さであれば、視界を遮る建物がほとんどない。
　これはいいね。
　口元がにっこりと微笑んだ。
　元々が平均以下な身長の真白にとって、これ程に見渡せる風景がよもや自宅にあるとは思いもよらなかったわけである。

「下よりも風が吹いて気持ちいいしー、……ってアレ？　なんか今横切ったよう、な……」

　見つめていた屋根立ち並ぶ景色の中に、白い布のような物が飛んで行ったような。
　更にその後を舞うようにして人が追いかけていたような。
　屋根の上、黒く見えた服装、身軽な動き。
　………どろぼうさん、か、またはヘンタ………

「なんて、こんなに真っ昼間にまさかね～」

　きっと新天地なここにまだ自分の脳や五感が慣れていなくて、幻のようなものを見たのだろう。
　そういうことにしておこう☆

「これからはたまに登ってみようかな、この新スポット」

　帰りを思うと、さすがに落ちないよう気を付けないとと緊張感も沸くけれど。
　デッキ構築に行き詰った時の気分転換には、充分素敵な場所だとも思う。
　なびく髪束をもう押さえず風と遊ばせながら、新たな発見に表情綻ばす真白がいるのだった。