スイカ・ザ・マッスル！｜リアクション

スイカ・ザ・マッスル！

【夏といえば？？】

「やあ、スイカ諸君。満喫しているかね？」
　旅鴉がスイカ男の集団に近寄り、声を掛ける。
　スイカ男たちは一斉に自慢の筋肉を旅鴉に披露すると、その中の一体が代表して答えてくれた。
「ありがとう、お嬢さん！　この日差し、この海風！　俺達が畑に居た頃には感じられなかった！　この姿が長く持たない事が本当に惜しい！」
「そう、その姿はきっと数時間と持たない」
　ずばり真相を告げる旅鴉。
「君たちに宿ったのは神魂という力だ。折角手足と意識が芽生えたのだ。生を楽しまねば損だろう」
　旅鴉は、このスイカたちが己の事情を把握していると推測、ならばと話を持ち掛けてきたわけだ。
「時に、夏を楽しむ為のプランは持ち合わせているかね？」
「そ、それは……！」
「そこでひたすらポージングするだけでよいのかね？」
「ほ、他に楽しみ方があるというのか？」
　スイカ男はこれでもかと強く話に食い付いた。
　旅鴉は腕を組むと、何度か小さく頷いてみせる。
「やはり持ち合わせてないだろうな。先程意識を持ったスイカだものな。では、我々の提示するプランに付き合ってはどうかね？」
　この提案にどよめく筋肉スイカ男たち。
「なに、心配無用。その為に我々は駆けつけた。このまま現実世界に戻られると非常に迷惑になるのでな」
「そ、そうか……そうだよな……」
　どうやら、スイカ男たちも自分たちの存在が特異なモノだと自認しているようだ。
　落ち込む彼らに旅鴉は自前のスケッチブックを広げ、中に描かれている絵を披露する。
「と、いうことで、私はこれから海の家を開店させる。皆、手伝ってくれると助かる」
　そう言って、彼女は自身が描いた絵に触れた。
　するとどうだろう！
　ろっこんによる絵の封印が解除され、砂浜の上に調理器具やらテント機材やら食材やらが大量に出現！
　事態を呑み込めないスイカ男たちを促し、旅鴉は臨時の海の家の準備に暫く勤しむことになる。