６月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

６月の☆ハッピーバースデー

【あったかなおウチ】

　一年に一度だけやってくる、うきうきワクワク、素敵な日。
　そう、誕生日です！　ハッピーバースデー！
　……いえまあ、歳なんて取りたくない……といったステバチな方も中にはいらっしゃるでしょうけれど。
　とにかく！　めでたい誕生日ッなのです！
（私ももう、１７歳かぁ）
　小山内海にとってももちろん、誕生日は特別な一日であります。
（じゃ、帰ろうっと）
　学校が終わったら、おめでとう！　と言ってくれるお友だちに、笑顔で手をふりふり。
　今日は海が暮らす桜花寮ではなく、旧市街の実家へ帰省します。家族水入らずで過ごすのが、小山内家における誕生日です。
　海の実家は島の北東、旧市街の端っこにありました。すぐそばを走る寝子電が鳴らす軽快なガタゴト音を耳で楽しみ、木天蓼湾にかかる寝子島大橋の威容を眺めてから、ちょっぴり懐かしく思える実家の扉を開きました。
　きっと、待っていてくれたのでしょう。すぐにもぱたぱたと弾むような足音がやってきて、あらまあおかえりなさい！　なんて、お母さんが出迎えてくれました。
　すぐにも心があったかくなって、嬉しくて、海はふにゃりとはにかみながら、スケッチブックを掲げます。
『ただいま！』
　なにげない文字も、どこか踊って見えました。

　お母さんが作ってくれるゴージャスなお料理もまた、お誕生日の楽しみのひとつです。今年も大変に張り切ってくれたようでして、テーブルにはずらり、ずらずらと海の大好物が並んでおりました。
『おいしそう！　たべていい？』
　どうぞ、めしあがれ。
　海。誕生日おめでとう！
　家族の言葉はあたたかく、やわらかく。毎年のことなのに、この包み込むような幸せに慣れてしまうことはありません。何度お祝いされても、何度味わっても新鮮な喜びが、海の胸をじんわりと満たしてくれました。
『ありがとう！　いただきます！』
　メニューにだって、そんな家族の愛情が現れています。１７本のろうそくが立った、大きなケーキ。ローストビーフに骨付き豚のグリル、鳥のから揚げと盛りだくさんのお肉に、巻き寿司、お野菜てんこもりのサラダ。フルーツ盛り合わせも！
　ちょっとがんばりすぎちゃった？　とお母さんは自分で苦笑いしておりましたけれど、海はにっこりにこにこ顔。ケーキをひと口、ぱくり！
『おいしい！　いつもありがとう！』
　今年も海は、満面の笑顔で思いを伝えます。
　今度はお母さんのお顔に咲く微笑みが、ぱあっ！　満開となりました。

　誕生日といえば、もうひとつ嬉しいことがあります。
　そう、誕生日プレゼントです！
（……なんだけど）
　いつもは欲しいものを伝えると、買ってもらえたりするのですけれど。海さん、今年はいろいろあって考えていなかったようですね。
（うーん。なにがいいかな？　もちろん、あんまり高くないもので……でも記念になるような）
　なんてあれこれ考えていたら、お母さんさすがです。娘さんのことをきっちりお分かりなのでした。
　今年は、お金をあげるから好きなように使ったら？　たまにはそういう誕生日もいいんじゃない？　なんて言ってくれたもので、
『いいの？　ありがとう♪』
　毎年やってくる誕生日、時には違った祝い方もいいものです。
（やったね。なにに使おうかな♪）
　欲しいものが見つかったら買ってしまうのもよし。お友だちといっしょに遊ぶのに使うのもいいでしょう。
　うきうきと胸弾ませながら、海の幸せな誕生日は、ゆるりと過ぎていったのでした。

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