異世界クリエイター、始めました｜リアクション

異世界クリエイター、始めました

●救世主達はかの地を離れる前に（１）

　《管理人》の声が、救世主として選ばれた一行に、帰還の時が近いことを告げる。

　世界樹の根元では、八神修が生み出した《アーシアン》達が、林檎に似た実を笑顔で頬張っていた。
　その様子を目に、御巫時子はふわりと目元を和らげる。
「気に入ってくれたみたいですね……」
「だな。他の生き物たちも、タネが方々で芽吹くまでは、ここに集うかもしれないね」
　修の言葉が、時子の胸の内を柔らかく光らせた。
　数多の生き物達が世界樹の元に集まる様子が、自然と、脳裏に浮かんだのだ。
　時子は、世界樹の幹にそっと触れて、相手にテレパシーを送る。
『これから、楽しみですね』
『ええ、とても。ありがとうございます、救世主のお嬢さん』
　２人の会話を耳に、修は、じきに訪れる別れを惜しむように自分を囲む《アーシアン》達へと、
「頼んだよ、皆」
　と、優しく、けれど力強い声音で告げた。
　短い言葉の中に、筆舌に尽くし難い、万感の思いを込めて。

「……と、そういうことにしたのでした！」
　帰還の前にと、きゅーちゃんを伴った桜庭円も、世界樹の元へと報告に向かっていた。
「報告したはいいけど、これって、向こうには聞こえてないかもなんだよね」
『たぶん、大丈夫だよ！』
　腕を組む円に、きゅーちゃんが明るい声で言う。
　円はもう一度、今度は優しく、きゅーちゃんのことを抱き締めた。
「もしかしてさ、また、会えたらいいよね」

「……こんな感じかしら」
　三宅葉月は、足元を這う蜘蛛に似た虫を目に、小さく呟いた。
　２つ目の金のタネで、葉月は、マリモ達が生む種子を餌とする虫を創造した。
　マリモ達の種子が、そして彼ら自身が、過剰になりすぎないように。
　辺りには既に、新たな命の光が煌めいている。
　鮮やかな緑のきらきらしさに、葉月は柔らかく目を細めた。

　恵御納夏朝の周りには、《まんちにゃん》達がわらわらにゃんにゃん集まっていた。
「救世主様とお別れ、寂しいにゃー」
「ありがとう。皆のこと、応援してるからね」
　しゃがみ込んで、《まんちにゃん》達をなでなでもふもふする夏朝。
　自分も自分もと、沢山の《まんちにゃん》達がぴょんぴょこした。
　もふもふに埋もれながら、夏朝は願う。
（この世界が、邪な意志持つものに侵略されず、末永く平和でありますように）

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