猫もいいけど、ペンギンもね？｜リアクション

猫もいいけど、ペンギンもね？

　響と鎌八もジェットコースターを堪能し、降車してきた。
「ふー、どうだ、ペンギンらも満足したか？」
　興奮した様子で鎌八の足元を突くペンギン数羽たち。
「はいはい良かったな、またな」
　彼はペンギンたちと握手を交わすと、そのままクールに立ち去るペンギンたちを見送った。
「もー、お別れのキスなんてくすぐったいよー！」
　一方、響は抱きかかえていたペンギンから熱烈なアクションを受けていた。
　これに鎌八の態度が激変する。
「こらペンギン！　俺のにゃんこたんのポニテに何しやがる！　それは俺のポニテだ！」
「つっこむところ、そこ！？」
　確かにペンギンは響のポニーテールの毛先をついばんでいたが、鎌八はちゅっちゅしていたことよりも真っ先にそこに食い付いたのだ。
「決まってるだろ、にゃんこたん。そのポニテは良いポニテだからさ」
　ドヤ顔で言い放つ鎌八に、笑顔で響は言葉を返した。
「相変わらずムッシュくんはポニテ好きで変態だね？」
「それほどでもないさ。さて、次は何処行こうか？」
「あ、許容しちゃうんだ、それ……」
　まさかのスルーに響は困惑。
　慌てて園内マップを参照する。
「えーっと、ミラーハウスはどうかな？」
「ミラーハウス？　あれは迷路みたいなもんで、もっとこう、子供向けの……」
　不満を漏らす彼に、響は頬を膨らませる。
「え？　嫌なの……？　ペンギンがいっぱいになって楽しいかと思ってさ。ジェットコースターはどこにでもあるけど、ミラーハウスはない遊園地もあるじゃない？　イリュージョンランドを象徴するアトラクションだよ」
「わかった、わかった！　にゃんこたんが行きたいなら付き合うよ」
「やったー☆」
　ようやく笑顔になった彼女に、内心、安堵する鎌八。
　そしてミラーハウスの中で、鎌八はカルチャーショックを受けた。
「ミラーハウスすげー！　オレが100パー間違ってた！　１つのポニテが100にも1000にも見えるとか桃源郷じゃないか！」
「どんだけポニテ好きなのムッシュくん！？」
　もはや響は苦笑いするほかできない。
「にゃんこたん、くるってまわってみて！？」
「え、こう？」
　響がその場で一回転をすると、鏡に映った響もポニーテールをなびかせて一回転！
　鎌八は360度大パノラマでポニテ乱舞を気に焼き付けて大歓喜！
「うはっ、ポニテ1000本回転！　これ、動画撮っといて寝る前に見よ……」
　鎌八がスマホを取り出そうとしたその時、足元でうろついていたペンギンに引っ掛かりバランスを崩して転倒！
　対して、響はちょうどペンギンに水を与えようと水筒の封を開けていた。
　そこへ鎌八の身体が上から覆い被さる！
「きゃっ！？　ムッシュくん！？」
「あ、ごめ……」
　２人の顔が急接近！
　このままハプニングで唇と唇のキスに！？
　と、思いきや、水筒の中身が響に掛かってしまった。
　すると、響のろっこん『チェシャ猫』が発動してしまう。
「にゃー？」
　あっという間に服ごと猫に変身。
　体の大きなペンギンの中に埋もれてしまった。
（一面のペンギンの中に猫……。可愛いと思うけど、自分じゃ見れないんだよね……）
　自分の姿を見ようと必死にもがく猫響。
　しかし、ペンギンたちがえっちらおっちらと響を囲んだまま連れ去ってゆく。
「にゃー！　にゃーにゃー！？」
（ペンギンたち！　ちょっと待ってよー！？）
「にゃんこたーん？　どこだー？　しまった、ペンギンに紛れてはぐれてしまったぞ」
　鎌八も周囲を必死に探すが、ミラーハウスの構造がややこしく行ったり来たり。
　このまま会えないなんてことがったら、と焦る鎌八の背後からマリエッタが現れた。
「どうしたのかしら？　迷子？」
「あ、いや、連れとはぐれたんだ。でも俺がこの中で迷って先に進めない。弱ったもんだ」
　どうしたものかと考える鎌八に、マリエッタは手近な鏡の壁に手を当てて念じ始めた。
　彼女はもれいび。
　こうすることで、ろっこん『アーキテクト・アナリシス』の効果により、掌に触れた建築物の内部構造が見取図として瞼の裏に投射されるのだ。
「ええと、一旦、ひとつ前の分岐に戻ったら右へ。その次を左に行ってから三叉路を直進すれば外へ出られるわよ」
「そうか。サンキュ、お嬢さん。ポニテじゃないのが非常に残念だ」
　鎌八は急いで来た道を戻っていった。
　残されたマリエッタは首を傾げていた。
「え、ポニテ……？」

　この後、猫響と鎌八は無事に合流。
　だが、猫響が人間の姿に戻らないため、やむなく鎌八が優しく抱っこして帰路に付く。
　彼の腕に抱かれて安心した猫響は、いつの間にかすやすやと眠りこけるのであった。

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