【星幽塔】第八階層　ハーピーの襲来｜リアクション

【星幽塔】第八階層　ハーピーの襲来

美咲紀は路地の奥に固まっていた町民のところへ走っていく。
「シュー君、逃がす前に怪我の手当てをするのです。時間を」
「わかった。稼いでおく」
　固まって震えている町民を見回した。
「怪我をしてる人は申し出てほしいのです！」
　するとちらほらと、手を挙げ始めた。
「あの、子どもが腕をつつかれて」
「妻が足を挫いてるんだ」
「大丈夫、順番なのです」
　美咲紀はろっこん、舞花の祈りを発動させる。
「どうだ、美咲紀？」
「怪我人は少ないのです！　教会より城の前庭に誘導するのです」
「なら、今だ。ハーピー達が二人のおかげで気がそれてる」
「皆さん、動けそうな人は安全な場所へ移動するのです。ついてきてください！」
　と、近くに座っていた子どもが泣きそうな顔になっていた。
「お姉ちゃん、僕達どうなっちゃうの？」
　美咲紀はにっこりと頬笑む。
「皆が助けにきてくれるので大丈夫なのです！」
「急げ！」
　美咲紀は修の横を通り抜け、町民達を連れて、路地を出た。
　修が路地の入り口に立って盾になり、襲ってくるハーピー達を弓で打ち落としていく。
「凄い数だな……」
　早く女王を倒さなくては。

　幸次はブロケイドと共に広場を駆け回っていた。
「ブロゥ、ジャンプっ」
　ブロケイドは噴水のオブジェを足踏みに、高く跳躍した。
「はあっ！」
　幸次はブロケイドの背中に乗ったまま、大鷹ハーピーの片足に剣先を突き刺した。
「ぎゃあぁっ」
「よしっ、やった」
　しかし、すぐに体勢を立て直した大鷹ハーピーに両肩を捕まれてしまう。装備のおかげで痛くはないが、このままでは空に舞い上がってしまったらかなり危ない。
「ちょっ」
　しかし、大鷹ハーピーの背中に何かが激突し、足が離れた。幸次はそのまま噴水へ落下してしまう。
「うあああっ」
　今度こそ、死んだ……！　そう思ったがブロケイドが飛び出してきて、背中で受け止めてくれたのだ。
「！　ブロゥ！」
「おい、大丈夫か！」
　路地の入り口にいた修が呼び掛けてくる。どうやら、修のろっこんが発動したらしい。近くの壁が欠けているのだ。「分解」を使ったのだろう。
「ありがとう！　そっちはどう？」
「避難は順調だ。だが、女王が見つからない」
　と、噴水の近くに着地した桜がボウガンの矢を放ちながら声をかけてくる。
「大鷹ハーピーはいるけど、女王は巣の方なのかもしれない」
「えぇ？　だったらどうしたら」
幸次がうろたえると、
「それはもちろん、あっちに行った人達に任せるしかないのです！」
　戻ってきた美咲紀が片手杖で風を操りながら、答える。
「だな、とにかく持ちこたえて」
　修ははっとした。
　ハーピー達の動きがいきなり鈍くなったのだ。妙だ。
　見ると、城下町の門の方で叫び声が。
「女王は討ち取った！　もう大丈夫だ！」
「シュー君、もしかして」
「ああ、どうやら好機のようだ」
　桜も察したようで、戸惑うハーピー達に矢を打ち込んで行く。
「お前達の女王は倒されたようだ。これ以上の戦いは無意味」
　四人は息を合わせる。
「「「帰れっ！」」」
　ほどなくして、指揮官を失ったハーピー達は逃げ出すように巣の方へと帰って行った。

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