【星幽塔】第八階層　ハーピーの襲来｜リアクション

【星幽塔】第八階層　ハーピーの襲来

修と美咲紀は大声を張り上げて、広場を走り回っていた。
「屋内にいる者は鍵をかけて外へ出ないように！」
「カーテンを閉めて、外を覗かないでほしいのです！」
　盾を並べ、そこから弓矢を放っている騎士達に走り寄った。
「俺達も手伝います。だから、逃げ遅れた人を安全な場所へ」
「わ、わかった」
　修は持っていた耳栓を彼らに渡す。
「君、危ない！」
ダチョウハーピーが迫っていた。修は騎士団に盾の中へ引き込まれる。その直後、縦に体当たりしてきた。
「ぐっ、なんて力だ」
「耐えろ！」
とっさに騎士の一人が取り出した銃で、打ち抜いたのですぐに動かなくなった。
「ありがとうございます」
　修が礼を言うと、
「なんの。期待してるよ」
「俺達でこの国と人々を守り抜こう。絶対にだ」
　騎士は少しだけ目を潤ませた。
「ああ、頼む」
　と、その時。
「助けてー！」
　その声を聞いて、修と美咲紀は辺りを見回した。
「あれか」
「危ないのです！」
　教会の前にいる少年達が薄い板一枚でなんとかハーピーを追い払おうとしている。教会の扉から外を覗いているのはシスターと幼い子供達だった。
　修は躊躇うことなく大型の弓を出現させる。
使用するのは威力が高く重く鋭い鋼矢を使う。修は弓を引き、
「子供に」
　矢を放った。
「手を出すなっ」
　放たれた矢はハチドリハーピーの翼の付け根に突き刺さり、地面に転がって悶え苦しむ。
　少年達が固まっている。
「早く中へ」
　修は次の矢を弓にかけながらそう指示した。
「了解なのです」
　美咲紀は放心状態の少年達の肩に触れ、教会の中へと誘導する。
「あ、ありがとうお兄さん、お姉さん」
「大丈夫なのです。早く」
　美咲紀は半ば押し込むように教会の中へと。
　と、自力で矢を抜いたハーピーがよろよろと立ち上がる。
　それを見た修は苦い顔をした。
「急所を狙わないとダメか」
　もう一発射ろうとした時。
　後ろからライオンが襲いかかった。ブロケイドだ。
　そして、幸次。
「ここは任せてよ。向こうの路地にまだ人が隠れてるみたいだった」
「すぐ救助に向かう。ありがとう」
「気をつけて、なのです！」
　修と美咲は駆け出した。

　桜は路地の陰から広場を覗いていた。飛び回るハーピーに町の騎士や一般人が逃げ回っている。
「あ、あの、帰っていく気配は」
　路地の奥の方には数十人の町民達が隠れているのだ。声をかけてきたのは老人だった。
「……まったくないです。この町から人間を追い出すつもりなのかも」
「そ、そんな」
　悲痛な声を上げるも、桜に出来ることは限られている。
「とにかく、ここを動かないで下さいね」
　と、広場から一瞬目を離した時である。
　もう一度視線を戻した時にはハチドリハーピーが物凄い勢いで向かってきていた。
「もう見つかった……？」
　桜がボウガンを構えるが、割り込んできた人物が。
「攻撃させないのです！」
　美咲紀だった。片手杖に魔風の光を集める。
深緑色の観葉系蔓性植物な形状で巻きつき、杖の装飾として一体化。緑光が先端の白翼部分に一瞬走査線のように煌めく。風が巻き起こった。
　巻き込まれたハーピーが悲鳴を上げる。そして、風を切る音がして、鋭い矢がハチドリハーピーの喉元へ突き刺さった。
「大丈夫か？」
　駆け寄ってきたのは修だった。
「ありがとう、二人とも！　実はこの奥に」
「わかってる。後は任せてくれ。俺達で逃がす」
　桜は頷いて、広場へ飛び出した。途端に標的になるも、ボウガンを空へ向ける。ハチドリハーピーに囲われ、守られている大鷹ハーピーに狙いを定め、放つ。
「やった！」
　見事直撃したのだ。胸元を貫いた。生きていたとしてもすぐには動けない。落下したそれを始末してくれているのは、
「ブロゥ！　押さえつけて！」
　ブロケイドに乗った幸次である。
「ごめん、そっちは任せるね」
　桜は小さく呟いて、駆け出した。足を止めていると標的にされてしまう。
　しかし、状況は変わらない。
「！　ここに来て増えてくるなんて」
　急降下して襲ってくるハチドリハーピーに対してだけボウガンの矢を放つ。向かってくるダチョウハーピーは壁ギリギリで回避しながら翻弄する。一発で戦闘不能に追い込むため、頭か胸を狙う。
　大鷹ハーピーは後二体だ。

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