美味しいアイスを君と｜リアクション

美味しいアイスを君と

◆午後の休息に、あの人と

　照りつける太陽を日傘で遮りながら、御巫時子はシーサイドタウンを散歩していた。その途中、ベンチで涼んでいると、『Lecker Eis』の看板が目に入る。オリジナルアイスを作ることが出来るという旨のチラシに惹かれていると、ちょうど隣に五十嵐尚輝が腰掛けた。

「先生！」

　時子が声をかけると、尚輝はちらりと時子を見て会釈した。

「……暑いですね」
「そうですね。アイスが欲しくなります……あ」

　話しているうちに、時子は何か思いついたのか手を叩き、『Lecker Eis』の看板を指差した。

「アイスが作れるみたいです。一緒に作りませんか？」

　黙したまま少し悩んだ様子の尚輝に時子は笑顔で続ける。

「面白そうですし、トッピングの種類も豊富ですし……」

　彼女の根気強い誘いに、尚輝も負けたようだ。

「せっかくなので、作ってみましょうか……」

　彼の答えに、時子は太陽に負けないくらい明るい笑顔を見せた。

　カランカラン、とドアベルを鳴らしながら二人は『Lecker Eis』へ入っていった。

「尚輝先生はどうしますか？」
「そうですね……こんなに多いと、悩みます」
「そうですよね。話しながら色々と決めていきませんか？」
「そうしましょうか……」

　そうして二人は和気藹々とフレーバーを選び始める。時子はバニラ、尚輝は抹茶と決めてみて、じゃあトッピングはどうしようと微笑ましいやり取りが続いた。

「出来ました……！」
「美味しそうですね」

　ワッフルコーンの中でビターチョコの鳥がバニラアイスの上に飾られている。時子はきなこと抹茶の香りを楽しみながら、尚輝のアイスを覗き込んだ。シンプルに抹茶の上に黒ゴマソースと金箔がかかっている。

「よくわからないので、御巫さんと似たようなものを……」

　尚輝の言葉を時子は嬉しく思った。外の暑さではすぐ溶けてしまうと、二人は話し合って席に座る。

「尚輝先生、私のアイスも食べてみてくださいね。美味しいですよ」

　時子はこう言って、スプーンでアイスを掬って尚輝に勧める。彼はそれをぱくりと口に含んで、

「……和風ですね」

　と言った。時子はふふっと笑い、それから学校のこと、夏休みのことなどを話し始める。

「尚輝先生は学校で暑さ対策されてますか？」
「まあまあ……」
「こまめに水分補給が大切です」
「気を付けます……」

　一口、一口。アイスが減っていく。

「尚輝先生は気になったトッピングはありますか？　次に試してみたい物とか……」
「そうですね……コーヒー味とか」
「そうなんですね。私はマシュマロが気になってます。食感が楽しそうですね」
「そうですね……柔らかそうです」

　最後の一口を、時子は名残惜しそうに掬い上げた。考えるのは次の約束だ。

「また来たいですね」

　その言葉に、尚輝は無言で頷いた。

「次は先生と同じトッピングにしてみたいです」
「では僕も、御巫さんと同じものを……」

　そう言って、二人笑い合う。

「いつか全部乗せもチャレンジしてみたいですね」