美味しいアイスを君と｜リアクション

美味しいアイスを君と

◆自分への投資は大切なのです！

　六月も中旬を過ぎ、夏――アイスの美味しい季節が近付いてきた。ぞろぞろと校門を出る生徒に紛れて、椿美咲紀は学校前の道を歩く。上から照り付ける太陽に目を細めながら、彼女の考えることといえばアイスのことだ。生徒の間で早くも噂となっている『Lecker Eis』のことを聞いた美咲紀は、もうすっかりその店に行くつもりでいた。もちろん、コンビニでお手軽に買えるアイスもイイのだけど、乙女心は新たなアイスクリームショップにしっかりと掴まれている。
　学校帰りの美咲紀は地図を見ながら足取りも軽く、『Lecker Eis』へと向かった。今日も暑い中一日勉強に部活にと頑張った自分へのご褒美である。ゆえにこれは、ただの寄り道ではなく心を豊かにするための自分への投資なのだ。そうどこかの誰かに言い訳しつつ、美咲紀は『Lecker Eis』と看板のかかったその店のドアを開けた。店内はクーラーがきいていて涼しく、天国のようである。美咲紀はショーケースの中に並ぶアイスクリームを眺めて、どうしようかと悩む。そうしてしばらく経ってから、彼女は意を決して並び始めた。

　戻ってきた彼女の手の中に会ったのは、ヨーグルトフレーバーの白いアイスの上に、クリームチーズのアイスの乗っかったものだ。軽めのクラッカーの添えられたその上には、クランベリー、ブルーベリー、ストロベリーのソースがかかっている。美咲紀はトリプルベリーのケーキのようなそれを専用のスタンドに立てて、あちらこちらからいろんな角度で撮り始めた。そうして納得のいくものが撮れると、瞳を輝かせながら食べた。

「これはなかなかいい感じなのです」

　美咲紀はぱくぱくと食べ進めつつもしっかりと味わう。ヨーグルトの風味は爽やかに、隣のクリームチーズアイスでレアチーズな雰囲気を楽しむことも出来る。さらに上にかかっているトリプルベリーのソースのおかげで、なんだかタルトのような楽しみ方も出来るような。

「カロリーはこの際、キレイに忘れましょう。考えてはいけないのです」

　冷静な思考を、美咲紀は言葉でもって打ち消した。

　見ても食べても楽しいそれも、口に入れればあっという間だ。

（他の組み合わせもまた今度、試してみたいですね）

　美咲紀はぼんやりと考えながら、空になったそれを片付け始めた。色々と頭に浮かぶイメージは、後日の楽しみにとっておく。今日？　とんでもない。美咲紀はふふっと笑う。

（これ以上食べたら晩御飯入らなくなっちゃう！）

このページにイラストを設定する