アニマル♡ウェディング撮影会｜リアクション

アニマル♡ウェディング撮影会

●トラブル続きの撮影

　マンボウくんを花嫁、あるいは花婿に希望する参加者は非常に多かったので順番は抽選で決められた。
　一番最初に撮影するラッキーなモデルはマリエッタ・ラシュリエ。
　撮影スタッフは不安な予感がしたが「ぼく、頑張るよぉ～」と寝子島観光大使としての責任を果たそうと張り切るマンボウくんを見ると、どうにかなるだろうと思った。
　そんなマンボウくんを横目に、マリエッタはスタッフと撮影場所と時間帯の最終チェックを。
「撮影場所はここですね？」
「ええ」
　マリエッタが撮影場所に選んだのは猫恋の鐘。
　マンボウくんは黒い蝶ネクタイをつけるだけなので準備はすぐ終わったが、マリエッタはメイク直し、ヘアセット直しと少々時間がかかった。
（着せられそうなのがなさそうなので、蝶ネクタイだけが無難でいいかも）
　横から見るとまるっこく、前から見ると平べったいマンボウくん用の衣装を作るのは時間がかかりすぎる。
　……という理由もあり、マンボウくん用の衣装は蝶ネクタイ、カフスといった簡素なものしか用意できず。
　それでも、自分なりに着飾ったマンボウくんは上機嫌なので「まあ、いっか」と思う撮影スタッフだった。

　とてもいい天気なので、いい写真が撮れそう。
　そんな気がしたマリエッタはマンボウくんと腕を組み、猫恋の鐘まで歩く。
　とてとて歩くが、すっげー遅いマンボウくん。そのうえ、２人の歩幅に少しの差がある。
　マリエッタの歩みがゆっくりなのは、マンボウくんに合わせているのも理由だが、ハイヒールを履いて砂浜を歩くので転ばないよう、慎重に歩いているのもある。
　足並みを揃え、ゆっくり、一歩ずつ、バージンロードを歩くように猫恋の鐘に向かう２人。
　その様子を、カメラマンは「いいですねー」と褒めながら撮影している。

　ここまでは順調かつ、いい雰囲気だったが、撮影スタッフは何やら嫌な予感がした。
　マンボウくんは極度の恐がりで、豆腐メンタルだというのを中沢リッカルド町長から聞いたので、絶対トラブルが起きると確信していた。
　ちょっと何か怖いことがあるだけで「きゅう」と気絶してしまうので、些細なことでも気絶する。
　様々な紆余曲折がありそうな撮影会になること確定、と、誰もがそう思ったら案の定。
　たまたま遭遇した猫にぶつかっては気絶。きつい坂道を歩き、体力が尽きかけてきたので気絶。
　小石につまづいてコケそうになった、高いところに来て怖がって気絶。
　何かが起きるたび、マンボウくんは「きゅう」と気絶するので、撮影スタッフは数人がかりで起こす羽目に。
（マンボウくんをお相手にしたのは間違いだったかしら？）
　起こされるマンボウくんを見ては、脳裏にそんな考えがよぎる。
　一瞬後悔したマリエッタだったが、お相手に指名した、ここまで来たからには、最後まで面倒見てあげようと決めた。
　マンボウくんを介抱したり、宥めたり、励ましたりと苦労の連続だったが、どうにか撮影場所に到着。

「マンボウくん、私と一緒に猫恋の鐘を鳴らしましょう」
「うん、鳴らそぅ～」
　いい雰囲気、とシャッターチャンスを狙うカメラマンだったが、鐘を鳴らした途端、大きな音にすごく驚いたマンボウくんは「きゅう」と気絶。
「大丈夫！？　しっかりしてっ！」
　倒れたマンボウくんに駆け寄り、身体（着ぐるみだけど）を擦って心配するマリエッタ。
　膝枕で介抱、というシチュエーションは様になるが、マンボウくんのサイズでは無理なので諦めた。
　また鐘を鳴らすとマンボウくんが気絶しそうなので、鐘を鳴らす振り、というシチュエーションで撮影。

　何だかんだとトラブル続きの撮影会だったが、どうにか終了。
「マンボウくん、お疲れ様。良く頑張ったわ」
「ぼく、頑張れたぁ～……？」
「ええ、頑張れたわよ。お疲れ様」
　ご褒美よ、とマンボウくんの頬にキスするマリエッタを微笑ましい……とカメラマンはこっそり撮影。
「お役に立てて嬉しいなぁ～……えへへぇ～」
　マンボウくんを見て、これはこれで、なかなかいい経験だったと思ったりするマリエッタだった。