【夏至まつり】A Long Long Day｜リアクション

【夏至まつり】A Long Long Day

●お清め～解理と貴子！

　伊賀解理は、楓子をお姫様だっこした、ぷりぷりお尻なアケーチとすれ違って思った。
（僕よりグラマーじゃないか）と。
　……まあ、そんなことはどうでもいい。
　解理が探しているのは尻ではなく知り合いである。それも、ぱっつんおかっぱで、こういう所に来たら真夏の浜辺なんて風紀が乱れてるなんて言って、眉間にしわを寄せてたりしそうな眼鏡の先輩……。
（いた！）
　腕組みをした元風紀委員長、北風貴子の姿を見つけ、解理の心は踊った。
「貴子さん！」
「あら……伊賀さん。久しぶりね」
「いやあほんとに。それにしても暑いですね」
「まったくよ……もう帰ろうと思っていたところ」
「その様子だと、祭り、全然楽しんでなさそうですね。よーし、お清め体験しましょう！」
　解理は貴子が逃げられないように腕に手を絡ませた。
「清廉潔白の化身の僕に清める事などあんまりないですが、海に潜ったら涼しそうですよ！」
　え、あ、と戸惑う貴子を尻目に、あれよあれよと白装束に着替えて入水。
　海の浮力に身を預ける。
「若干温いが、それでも気持ちいいなぁ～」
　海に入ってしまえば貴子も観念したようで、夏至の暑気より気持ちがいいと波にすいすい。
「ところでお清めってどうするんだろ？」
　解理が胸の前で手を合わせてそれっぽいポーズを取ると、貴子はキリっと眼鏡を光らせ、
「ポーズだけじゃだめよ。日々に感謝し、黙想するのよ」
　と、合掌して瞼を閉じる。
　ふむふむ、とりあえず貴子さんを参考に……と観察して、解理はぼっと赤くなった。
（こ、これは……白装束が濡れて貴子さんのボディラインがなんとなくわかる状況になってる……！）
　見てはだめだと思いつつ、濡れ透けの胸のラインに目がいってしまう。
（……貴子さん、高校の時よりスタイル良くなったんじゃなかろうかって待てぇい！　このまま海から出たらこの状態を衆目に晒す事になる！　それはいかん、いかんぞ……）
　自分以外の男の目に触れたら僕の貴子さんが汚れる！
　くらいな気持ちになってしまい、黙想もくそもない。
「……ふう。たまに無心になるのもいいわね」
　貴子が目を開けた。いったん眼鏡を外し、湿った前髪をかき上げる。
　利発そうなおでこが露わになって、解理は無心とは縁遠い使命感を強めた。
（夏の陽気にやられた野郎から貴子さんを守らねばな）
　それとなく貴子の白装束の合わせを直し、キッ、キッ、と左右を厳しくチェックする。
　ちょうどよく、ナンパそうな男はいない。
「今です。上がりましょう」
「え、もう？」
「危険ですから！」
「危険？　え、何が？」
　またまた、戸惑う貴子。両手を広げ、衆目から濡れ透け貴子をしっかりガードする解理。
　傍目には若干ヘンだが、解理的に目的は果たしている。

「僕かい？　この平坦ボディをガン見する奴なんていないからいいんだよＨＡＨＡＨＡ」