【夏至まつり】A Long Long Day｜リアクション

【夏至まつり】A Long Long Day

●お清め～白装束に着替えよう！

　お清め、というのは、いわゆる禊である。
　これは日本のとある神社のお祭りがモチーフだ。その神社では、夫婦岩の間から差し込む朝日を浴びながらの禊だそうだが、寝子島ではそのあたりはゆる～く、とりあえず白装束になって海に浸かるというところだけ真似ている。

「みそぎー！　参加者募集中！　なのデス！」
　トワ・E・ライトフェロゥが勝手に呼び込みをしている。
「……みそぎー？」
　通りかかった曖浜瑠樹が首を傾げた。
「みずぎの間違いかねぇ……？」
「違うマス！」
　トワがすかさずツッコむ。
「違うのかぁ？　そしたら、みそぎって何だろねぇ？」
　ほわほわのんびりな口調で問い返され、トワははた、と、自分もよく知らないことに気付いた。
「ソウイエバー、呼び込みを手伝っておいてなんデスケド、みそぎとか―しろしょーぞく、って何デス？」
　そこに通りかかったのが、千歳飴楓子である。
「少年少女よ。禊や白装束について知りたいのかね？」
　こくこくと頷くトワと瑠樹。すると楓子は語り始めた。
「禊。それは、これからやってくる水着ガチャのための修行だ」
「みずぎ？」
「ガチャ？」
　うむ、と楓子は鷹揚に頷く。
「ここ最近幾度となく繰り返してきた大爆死……その原因を探るべくアマゾンの奥地へと向かった楓子は（これは誇張表現です）真理にたどり着いた。そう、物欲センサーが働いているのだと！！！」
　がしっと拳を握る重課金ユーザー。なんか勢いがすごくて、トワと瑠樹も手に汗握る。
「そういうわけで白装束だ。死んだ人が着るアレだ。白い着物」
「しんだひと？」
「Zombie？」
「生きてても着る。滝行とかでも着る。無になるためのアイテムだよ。修行の効果をＵＰさせてくれる」
　楓子の適当な説明を、トワと瑠樹は真剣な眼差しで聞いた。
「面白そうデスカラー、トーワーも―やるのデス！」
「よーし、オレもみそぎ？　やってみるよぉ！」
　えいえいおーとこぶしを突き上げる。
「まずは着替えるマス！」
　ばっとピンクのワンピースに手を掛けるトワ。わあー、と瑠樹はそれを止める。
「女の子は突然脱いじゃダメー！」
「オットー此処ではないとー」
「あちらに更衣室があるようだな。よし、楓子と行こう」

◇

　というわけで、楓子とトワは、白装束に着替え完了！
　瑠樹もサンマさんとお揃いの褌姿になって、三人揃って意気揚々と砂浜に出てくると、白装束になって禊に挑もうとする羽生碧南とばったり遭遇した。
「わあースタイルのいいおねえさんだねえ」
　瑠樹のほのぼの声に応え、180センチとモデル並みに長身な碧南はにっこり。
「ありがとう。ぴったりなのがあって一安心だわ」
　碧南のような高身長女子は、日頃から服のサイズで苦労しがちだ。可愛い服があっても、あと２０センチ小柄でないとダメだったりすることも多い。だから基本的にＴシャツやジーンズなどのラフな服装になりがちであるが、今日はみなと揃いの恰好が出来て、ちょっとしたことだけど内心嬉しい。
「さあ、諸君！」
　楓子が拳を突き上げる。
「この禊で楓子の中に眠る物欲を滅し、健全で美しい精神と共に水着ガチャへと挑むぞ！！」
「おー！」
「おー！ナノデス！」
「よ、よくわからないけど……そうなのね？」
　楓子といっしょに拳を突き上げる瑠樹とトワ。
　碧南も（これも儀式なのかな）と思いながらいっしょに拳を突き上げる。
　瑠樹とトワと楓子は、砂を蹴り上げ、海に向かって走り出した。
　つられて走り出した碧南だったが、聞き覚えのある声で名を呼ばれる。
「羽生君？」
「ひゃあっ！」
　振り返ればそこにいたのはワカメ風のウェーブヘアに、ひょろっと色白の肌に白装束姿の――、
（鷹取先輩だ！）
　そう。碧南の想い人、鷹取洋二がいた！

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